妊娠中期に胸が痛いときに考えられることとは

妊娠中期に胸が痛いときに考えられることとは

妊娠中は女性ホルモンの分泌の変動によって、女性の身体は大きく変化する時期です。

お腹や胸、腰、肩など全身にいろいろな身体症状もみられます。妊娠中期の胸の痛みは何が原因で起こるのでしょうか。

妊娠中期の時期に起こる身体の変化と、胸の痛みがみられたときに考えられることについてみていきましょう。

妊娠中期とは

妊娠中期は、妊娠5〜7カ月(16〜27週)の安定期に入った頃です。つわりもおさまって、体調が落ち着く人が多い時期ですが、だんだんお腹や胸などが大きくなって身体が丸みを帯びてきます。赤ちゃんの胎動を感じるようになる時期でもあります。

妊娠中期にみられる胸の痛み

妊娠中期にみられる胸の痛みは、以下のことが考えられます。

妊娠による女性ホルモンの変動

胸の張りや胸の痛みの症状は女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの分泌の変動が関係していると考えられています。妊娠が成立してから出産までエストロゲンとプロゲステロンの分泌は増加し続けるので、妊娠中期にも胸の張りや胸の痛みといった症状が見られます。胸の張りの症状は妊娠初期に自覚する方が多いですが、妊娠中期、妊娠後期にも見られます。

肋間神経痛や胸の筋肉の痛み

妊娠中期ごろには肋間神経痛や胸の筋肉の痛みで胸が痛いという症状が見られることがあります。妊娠中の乳房のトップ周囲値とアンダー周囲値の変化を調査した研究では、妊娠中期にあたる16〜28週ではアンダー周囲値が約5センチ大きくなるとされています。

アンダー周囲値が大きくなる理由としては、胎盤が完成し、赤ちゃんが大きく発育していく時期であるため、子宮が大きくなるとともに子宮底が上に上がり、胃や横隔膜が押されることが関係していると考えられています。1)胃や横隔膜とともに肋骨が押し広げられて胸の筋肉が引き伸ばされ、痛みが出ることや、肋間神経が圧迫されて痛みが出ることが考えられます。

お腹や胸が大きくなり、体形が変わることで姿勢のとり方も変化します。運動をする機会が減って筋肉量の減少や筋力が低下し、体勢を変えるときや動作開始時に胸の筋肉に負担がかかって痛みを誘発することもあります。

肋骨の骨折

妊娠中期には子宮が大きくなるとともに内臓や肋骨に圧がかかります。胎動も出てくる頃で、胎動の負荷も肋骨にかかります。骨粗しょう症などがあると骨折のリスクが高くなります。強く胸を打つなどのきっかけがなくても負担が重なって疲労骨折を起こし、肋骨にひびが入って胸の痛みが出ることがあります。

周産期心筋症などの心疾患

妊娠から産褥期にかけて、心不全の既往のない女性が心不全を発症し、心臓の機能低下をきたす周産期心筋症という病気があります。7割は産後の発症ですが、妊娠中期にあたる妊娠20〜27週にも3%が心不全を発症しています。2)

妊娠してから急に心不全を起こすこともあるので、心疾患から起こる胸の痛みには注意が必要です。心不全の症状は胸の痛みのほかに、息切れや咳、むくみ、倦怠感、動悸、体重増加などの症状が見られますが、妊娠中の変化としても見られる症状のため、心不全によるものか、妊娠によるものか、判断が付きにくいかと思います。

狭心症や心筋梗塞、心膜炎などの心疾患でも胸の痛みがみられることがありますので、気になる胸の痛みがあれば産婦人科や循環器内科、心臓血管外科などを受診しましょう。

帯状疱疹

水疱瘡にかかったことがある人は、帯状疱疹ウイルスが神経に潜んだ状態です。何らかの誘因によって、潜んでいた帯状疱疹ウイルスが活性化すると帯状疱疹を発症します。肋間神経に帯状疱疹ウイルス入り込むと、赤い発疹や水泡が胸の神経が走っている部分に沿って帯状に出現し、ピリピリとした痛みが生じます。

帯状疱疹の治療は抗ウイルス薬が用いられますが、妊娠中の服用については十分に医師と相談する必要があります。

逆流性食道炎

胃液や胃の内容物が食道に逆流して、炎症が起こり、食道がただれたり、潰瘍ができたりします。妊娠中期には子宮が大きくなる影響で胃に圧がかかり、食道への逆流が起こりやすくなります。胃酸の酸っぱい液が口まで上がってくる場合や、胸やけ、胸の痛み、げっぷ、喉の違和感などの症状が見られます。妊娠時には、つわりの症状と区別がつきにくいですが、いつもとは違う気になる症状があれば、かかりつけの産婦人科に相談するか消化器内科を受診しましょう。

胸のしこり

乳腺が発達して症状が出る乳腺症や乳腺炎、胸の良性のしこり、乳がんなどでも胸の痛みが出ることがあります。


1)新川治子ら 現代の妊婦のマイナートラブルの種類,発症率及び発症頻度に関する実態調査 日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 23, No. 1, 48-58, 20092)堀井満恵ら 妊娠経過に伴う乳房の発育状況と泌乳との関係 富山医科薬科大学看護学 会誌 第1号1998
2)国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス 周産期心筋症 Link