授乳期の胸が硬い時のほぐし方

授乳期の胸が硬い時のほぐし方

授乳中に胸が硬くなることはよくあります。
でも、そのときには授乳したほうが良いのか、授乳せずに安静にしておいた方が良いのか迷うことがありますね。
また、授乳してもまだ乳房の硬さが残っていると、どうしたら良いのかも不安ですね。
ここでは、胸が硬くなる原因とそのときのほぐし方を、私の経験したケースも合わせてお話します。

胸が硬くなる原因

うっ積

産後3日前後に、胸が硬くなってくる方がいらっしゃいます。
これは、乳房の中で母乳が作られる過程で一時的に硬くなるのです。

乳房の中には、乳腺細胞という細胞があります。
血管のすぐ近くにあるこの細胞が、血液中のタンパク質や白血球などの母乳に必要な成分を細胞内に取り込み、乳腺細胞が作る乳脂肪などの成分を加えて母乳ができ上がります。
これらの変化が起こっているときに、乳房が硬くなることがあります。

同時に痛み感じる方もいらっしゃいますが、生理的な範囲で起こりますので、様子を見ましょう。
乳房が硬くなる感じや痛みなどの乳房の変化は個人差があり、何も感じない方もいらっしゃいます。

白斑

「白斑(はくはん)」は、乳頭の一部がニキビができたときのように白くなり、乳口をふさいでしまうことです。
白斑ができると、乳腺の出口部分(乳口)が白斑で蓋をされたような状態になっています。

そこからは、母乳が出にくくなっていたり出なかったりするので、白斑がある乳口につながっている乳腺に母乳がたまって硬くなってしまうのです。
白斑の部分から少しずつ母乳が出てくる場合もありますが、完全にふさがれて母乳が出て来ない場合は、しこりのようになり硬く痛みを伴うことが多いです。

乳腺炎

乳腺炎になると、乳房が硬くなることが多く、痛みや熱が出ることも多いです。
乳腺炎は、母乳中の白血球や細菌の数によって、「非感染性(うっ滞性)乳腺炎」と「感染性(化膿性)乳腺炎」に分類されています。

非感染性(うっ滞性)乳腺炎

非感染性(うっ滞性)乳腺炎は、母乳が通る管である乳管がつまって母乳がたまっているために、乳房に炎症症状が出る状態のことです。
授乳間隔がいつもよりも長くあいたり、赤ちゃんの飲み具合があまり良くなかったりすることでも胸が硬く感じることがあります。
乳房の腫れや痛み、乳房が熱い、硬い、赤くなるなどの症状があります。
多くは、乳房は熱くなりますが、発熱はないことが多いです。

感染性(化膿性)乳腺炎

感染性(化膿性)乳腺炎は、乳頭や乳輪部の傷口から細菌などに感染することによって起こります。
38度以上の高熱、乳房が硬く痛みもあり、乳房が熱い、赤くなるなどの症状があります。
急に発熱し、寒気や関節痛などの症状が出ることもあります。

受診・抗生物

感染性(化膿性)乳腺炎の場合は、悪化する可能性がありますので、受診しましょう。
非感染性(うっ滞性)乳腺炎の場合も、心配なら受診をおすすめします。

なぜかというと、感染性(化膿性)乳腺炎では、対処が遅いとどんどん状態が悪くなって、乳房に膿瘍を作ってしまうからです。
こうなると、抗生物質が効かないこともありますし、切開が必要になることもあります。

受診すると、多くは授乳をしながら飲める抗生物質が処方されます。
授乳をやめるように言われなければ、安心して飲むことができますので、怖がって飲まなかったり、途中で飲むのをやめたりしないようにしましょう。
または、数日間病院に通って抗生物質の点滴を受ける場合もあります。

注意

乳腺炎の場合は、自分で治そうとせずまず受診しましょう。
明らかに乳房の症状があって、38度以上の熱があるときには受診しましょう。
時間がたつと悪化して、抗生物質が効きにくくなったり治りが遅くなったりする可能性があります。
また、切開をしなければならないこともあります。

断乳

断乳をしたいと思って、授乳を急にやめると乳房が硬くなることがあります。
これは、本来なら飲んでくれるはずの母乳が、乳房にたまってしまったことによって起こります。

1日に何度も授乳しているところで断乳すると、急に母乳が吸い出されなくなって乳腺にたまり、そこが硬くなってしまうことがあります。
多くは痛みがあります。

搾ってしまえば、硬さはなくなることが多いのですが、断乳のときにはあまり頻繁に搾乳をしない方がよいため、どうしたら良いのか対処に困ってしまいますね。
断乳するときには、助産師に確相談した方が良いでしょう。

ほぐし方

乳房をほぐすときに大事なことは、無理をして硬い部分をほぐそうとしないことが大事です。
乳腺炎で熱が38度以上あるときには、まず受診をしましょう。

また、自分でほぐすのが難しいようなら、助産師や医師に相談してくださいね。
硬い乳房をほぐす方法は色々とありますが、血液循環を良くすることから始めるといいですよ。

肩回しでほぐす

肩をぐるぐる回す方法

両方の肩に手を置いて、肩をぐるぐる回します。
このとき、肘をできるだけ大きく回すように意識するといいですね。
また、手を肩に置いて回すと腕が安定します。

例えば、前の方に20回、後ろの方に20回回してしてみてください。
肩甲骨が動くと、乳房への血液循環も良くなります。
授乳中は、肩も凝るし腕もだるくなりますね。
少しずつ動かしてほぐしていきましょう。

温めてほぐす

乳房や肩甲骨の間の部分を温めるのもおすすめです。
やけどに注意してくださいね。
ただし、うっ積状態のときや乳腺炎で熱はあるときには温めないでください。
その他の方法でほぐしてみましょう。

乳房を動かしてほぐす

肋骨から乳房をはがす方法

乳房全体を動かすのもいいですね。
一番簡単なのは、肋骨から乳房をはがすようなイメージで、時計回りや反時計回りにぐるぐる動かす方法です。
できるだけ大きく乳房全体を回すようにしてくださいね。

痛い場合は、無理をしなくても大丈夫です。
痛くない程度に加減して動かしてみましょう。

授乳してほぐす

授乳すると、胸の硬さが軽くなることが多いです。
赤ちゃんが飲むようなら、どんどん授乳しても大丈夫です。
実は、助産師よりも赤ちゃんの方がほぐすのがうまいんですよ。
調子が悪いときには、頻回授乳をしてみましょう。
または、授乳時間を長くしてみるのもいいですね。

私が担当した患者さんの例

産後1週間前後の方で、乳房が硬くなっていてなかなかほぐれない方がいらっしゃいました。
乳房の外側や内側が硬いのです。

赤ちゃんは、1日6−7回、5分ほど吸うだけですぐに寝てしまって、十分に母乳を吸い出していないようでした。
赤ちゃんが5分で吸うのをやめた場合、起こしてでも長く授乳するようにお伝えしました。

また、授乳の回数も1−2回増やせそうだったら増やすことも提案しました。
数日後に、お電話でその後の乳房の様子を確認すると、硬さは徐々に取れて、赤ちゃんも起こすと5分以上は吸い付くようになったとのことでした。
授乳回数も8回前後に増えていました。

乳房のトラブルや調子があまり良くないときは、授乳回数を増やしたり、授乳時間を長くしたりして、まず授乳を頑張ってみてください。
そうして、あまり改善しないなら、助産師に相談するのがいいですね。

搾乳してほぐす

赤ちゃんがうまく飲めない、時間が短いなどの場合は、搾乳してみましょう。
うっ積状態の場合は、搾乳器ではなく手で搾るほうが無難です。
搾乳器だと刺激が強く、乳房の硬さがあまり改善しないことがあります。

うっ積状態の場合は、手でポタポタと搾る程度で良いでしょう。
乳腺炎のときも注意です。
無理をしてほぐそうとすると、余計に炎症の程度が悪化する可能性があります。
その他の場合は、特別に痛みが強くなければ、搾乳器で搾っても大丈夫です。

硬い部分を圧迫してほぐす

硬くなっている部分を押したり乳頭の方向へ手で流すようにしたりして、圧迫します。
授乳の前や授乳中にも圧迫を加えてみると良いでしょう。

乳腺炎などで痛い場合は、自分ではできないかもしれません。
自己流でやると症状が悪化する場合がありますので、無理をしないで医師か助産師に相談しましょう。

助産師に相談してほぐしてもらう

できる方法を試した後、痛みもあってあまり硬さが改善しないときには、助産師に相談しましょう。
適切な方法で硬い部分をほぐしてくれるでしょう。

また、自宅ではどのようにすればいいのかをアドバイスしてくれると思います。
無理をして自分でほぐそうとしない方がいいですね。

私が担当した患者さんの例

3−4日前から片方の乳房の外側が硬くなって痛い、乳房が熱くなっているとご相談を頂いたことがあります。
詳しい状況がわからないので、来て頂くと確かに赤く熱を持って硬くなっています。
授乳したり、自分でマッサージしたりと色々試しても良くならないので、ご相談頂いたのです。

全身的な熱ではなく、乳房だけのようでしたので、非感染性(うっ滞性)乳腺炎かなと思いました。
私が少しずつ乳房の硬いところをほぐしていくと、ある乳口からはたくさんの母乳が出るけれど、ある乳口からはとても細い線でしか母乳が出なかったり、出にくかったりしていました。
根気よく30分近くほぐしていたところ、だんだんと出にくい乳口から母乳が出始め、外側の硬い部分が軟らかくなってきたのです。

どうも、乳腺が細くなっていて、母乳が出にくくなってつまりかけていたようです。
あとは、赤ちゃんに飲んでもらってどんどん母乳が吸い出せると良くなっていきそうでした。
私がほぐした刺激がありますので、少し冷やすことをお伝えして帰宅されました。

次の日に、電話で様子を伺うともうすっかり硬さも痛みも取れたとのことでした。
1回のマッサージでスムーズに症状が改善したケースです。
改善するのに、何日かかかる場合もあります。

まとめ

乳房が硬くなる原因は色々ありますね。
乳腺炎のときには、対処が遅くなると悪化しますので、早めの受診をおすすめします。

その他の場合は、ほぐす方法を試してみて、あまり症状が治まらない場合は医師科助産師に相談してみましょう。
きっと良いアドバイスがもらえるでしょう。

医療情報科研究所編集(2009)『病気が見える』vol.10 産科(第3版)メディックメディア
堀内成子編集(2016)『エビデンスをもとに答える 妊産婦・授乳婦の疑問92』南江堂