妊娠中に経験する方も多い胸の張り。痛いと感じるほどに胸が張る人もいます。私も妊娠がわかる前には胸が張って痛い思いをした経験者の一人です。

妊娠したら胸が張るという情報は耳にしたことことがあっても、なぜ胸が張るのかということまではなかなか知る機会がないですよね。今回は、妊娠中に胸が張る仕組みと、痛い胸の張りの対処法について一緒に学んでいきましょう。

妊娠中の胸の張りの原因

妊娠中に胸が張るのは女性ホルモンの分泌の変化によるものです。女性の月経期→卵胞期→排卵期→黄体期からなる月経周期では、2つの女性ホルモン(エストロゲンプロゲステロン)の分泌量の周期的な変化がみられます。

エストロゲンの分泌と作用

エストロゲンは、発育した卵胞から分泌されるホルモンで、卵胞ホルモンとも呼ばれます。月経が終わった後から排卵前にかけてと、排卵後から月経前まで分泌量が増加します。

エストロゲンは女性らしい身体をつくるホルモンで、以下のような作用を持っています。

  • 排卵と妊娠の準備のために子宮内膜を厚くする
  • 肌のツヤやハリをよくする
  • 髪の毛のツヤをもたらす
  • 骨粗しょう症の予防
  • 動脈硬化の予防
  • 記憶力を促す
  • 基礎体温を下げる
  • など…

プロゲステロンの分泌と作用

プロゲステロンは、黄体(排卵後の卵胞)から分泌されるホルモンで黄体ホルモンとも呼ばれます。排卵後から月経前まで分泌量が増加します。

プロゲステロンは受精卵が着床する準備を整え、妊娠の継続をサポートするホルモンで、以下のような作用があります。

妊娠中の痛い胸の張り。胸が張る仕組みと対処法を解説 image 1
  • 水分を身体に蓄える
  • むくみが生じる
  • 吹き出物ができやすくなる
  • 基礎体温を上げる
  • 胸が張る
  • 精神が不安定になる
  • など…

胸の張りが起こる仕組み

月経期から排卵後にかけては、プロゲステロンよりもエストロゲンの分泌が優位となる時期です。ちょうど月経前となるこの時期に胸の張りを感じる方も多いのではないでしょうか?

胸の張りがみられるのは、プロゲステロンの水分を溜め込む作用によって、乳房に水分が蓄えられ、むくみが生じた状態になるためということが言われています。

また、女性ホルモンの分泌はストレスの影響を受けて変化しやすくなります。疲れや睡眠不足、食生活の乱れなどがあると、エストロゲンとプロゲステロンの2つのホルモンのバランスが崩れ、胸の張りの症状がみられることもあります。1)

妊娠すると女性ホルモンが大幅に増加する

妊娠が成立すると、エストロゲンもプロゲステロンも大幅に分泌が増加します。妊娠中は、水分を身体に溜め込んで乳房のむくみをもたらす作用のあるプロゲステロンの分泌量がエストロゲンよりも優位となります。2),3),4)

母乳をつくることを促すプロラクチンも妊娠すると増加します。プロラクチンやエストロゲンには乳腺を発達させる作用があり、妊娠中はこれらの女性ホルモンの分泌量が増える影響によって、胸の張りが起こります。

妊娠中の胸の張りの対処法

妊娠中の胸の張りは女性ホルモンの変動という生理的な要因によるものといえども、辛いときにはどうにかしたいと思いますよね。私も妊娠中に胸の張りが辛いと感じる時期がありましたが、妊娠して起こる変化だからしょうがないとひたすら耐えていました。

しかし、妊娠中の胸の張りをやわらげる対処法があるのです。対処法を知って胸の張りがみられる時期を乗り切りましょう。

妊娠中の痛い胸の張り。胸が張る仕組みと対処法を解説 image 2

胸の張りはホルモンの変動によって起こりますが、生活習慣を整えることでホルモンバランスがゆらぎにくくなります。直接的な胸への刺激が胸の張りを助長することもあるので、胸への刺激を避けることも有効です。

生活習慣を整える

妊娠中の胸の張りの症状や程度は人さまざまです。もともとのホルモンの分泌量の個人差もありますが、ホルモンの分泌はストレスや生活環境、食生活に影響を受けます。妊娠初期は、つわりでなかなか理想の生活習慣を送ることが難しい時期でもありますが、なるべく睡眠不足や疲れを溜め込むことは避け、食生活を整えることを心がけましょう。

下着を見直す

胸の張りの症状として、乳房や乳頭が下着に擦れると痛いと感じる場合もあるようです。下着は肌に優しく刺激の少ないものを選びましょう。また、胸への血流を妨げると胸の張りの症状が強くみられることもあるので、下着は窮屈すぎないものを選びましょう。

温めすぎに注意

張っている胸を温めると、余計に胸が張ることがあります。お風呂やシャワーは、熱いお湯は避けましょう。身体を洗うときも胸は優しく洗い、強い刺激を与えることは避けましょう。お風呂上りは胸の皮膚も保湿を行い、乾燥の刺激から肌を守りましょう。

1)一般財団法人日本がん知識普及協会 健康かわら版 2月号 「女性の健康」について Link

2)正常月経周期,正常初期妊娠の血中ホルモン動態について 日本産科婦人科学会 雑誌 AcTA.oBsT GYNAEc JpNv・30No,PP,26L? 269 1978 Link

3)鶴川台ウイメンズクリニック 女性ホルモン検査でわかること3・妊娠から出産 Link

4) 宮崎修平、村端亮 視床下部—下垂体−性ホルモン Link