授乳中に恐れられている胸の張りとしこりは、なぜ起こるのでしょうか。
繰り返す方もいらっしゃいますし、何の症状もない方もいらっしゃいます。

胸の張りとしこりの正体は何か、その対処方法についてお話します。

産後3日前後の胸の張りの正体は?

産後3日前後に起こる乳房の張りは、生理的な乳房の変化ですので、多くの方が体験するかもしれません。

このときに、しこりを感じる方もいらっしゃいますが、それほど多くはありません。

原因

この頃の胸の張りの正体は、母乳が作られる過程で起こる変化です。

産後間もなくは、妊娠中とは働きが違うホルモンが分泌され乳房に作用します。
その反応として胸が張るのです。

産後3日前後になると、胸の血管が青く浮き出ていることが多く、だんだんと胸が張ってくることがあります。
母乳は血液やリンパ液などからできていますので、それらが乳房にどんどん集まり、母乳を作る過程で胸を張らせるのです。

といっても、すべての方が胸の張りを感じるわけではありません。
また、中には乳房に石が入っているかのように硬く張り付くような胸になっていることがあります。

胸の張りの様子は個人差があります。
そして、胸の張り具合で母乳がよく出る、出ないの判断はできません。

いつまで続く?

産後3日前後の胸の張りは、しばらく続き、赤ちゃんが母乳をしっかりと飲めるようになったり、うまく搾乳ができると、産後9日目頃以降は落ち着いてくると言われています。

対処方法

対処方法としては、赤ちゃんに積極的に授乳することです。

乳輪部と乳頭部をつまんで母乳が何本か出てくるようでしたら、乳腺は開通しています。
今後開通する乳腺は増えてくるでしょう。

乳腺が開通していない場合は、乳輪部と乳頭部をつまむ、もみずらす、引っ張るなどしてほぐしましょう。

このとき、乳頭だけではなく乳輪部も合わせてほぐすのがポイントです。
石のように硬く肋骨に張り付いている乳房の場合は、乳房全体をゆっくりと肋骨からはがすように動かしてみてください。

 何ヶ月かたった後の胸の張りやしこりの正体は?

産後間もなくの時期だけでなく、何ヶ月かたってからの胸の張りやしこりもあります。

原因

授乳を始めて何週間もたった後の張りやしこりの多くは、乳腺の詰まりや授乳間隔が長くあくことによって、母乳が溜まっていることによって起こります。

頑固なしこりは、乳房の張りはおさまったけど、しこりがなくならないということもあります。
この場合、乳腺が詰まっていたり、細くなって母乳が出にくくなっていたりします。

よく食べ物が関係しているのではないかといわれていますが、関係ありません。
食べ物は、記憶に残りやすいので「あのときピザを食べたから」「ケーキを食べてしまった」と乳腺の詰まりの原因として話されることが多いです。
でも、科学的な根拠は証明されていない情報なのです。

授乳中に起こる胸の張りやしこりの正体は?対処はどうするの? image 1

いつまで続く?

授乳すると胸の張りやしこりは軽くなることが多いです。

乳房が張っているということは、母乳が溜まっているということですので、それを出していく必要があります。
頑固なしこりは、しばらく続いて徐々になくなっていくことが多いです。

対処方法

対処方法は、こまめに授乳することです。
また、抱き方を変えて授乳するのもいいですね。

しこり部分は、押さえたり動かしたり、乳頭の方向へしごいてみたりと色々な対処方法がありますが、1-2日上記の対処をしても症状が良くならない場合は、助産師に相談しましょう。

あまり時間がたつと、余計に凝り固まり、ほぐれるのに時間がかかります。
最悪なのは、そこに感染を起こして乳腺炎になることです。
早めに対処しましょう。

病的な張りやしこりはどうする?

これまでお話してきた胸の張りやしこりは、生理的な範囲のものです。

では、病的な張りやしこりには、どんふうになるのでしょうか。

それは、みなさんもご存知の「乳腺炎」です。乳腺炎は、母乳中の白血球や細菌の数によって、「非感染性(うっ滞性)乳腺炎」と「感染性(化膿性)乳腺炎」に分けられます。

ここでは、「感染性(化膿性)乳腺炎」の原因や症状、対処方法をご説明します。

原因

感染性(化膿性)乳腺炎は、乳頭や乳輪部の傷口からブドウ球菌、レンサ球菌などに感染するることによって起こります。

症状

38度以上の高熱、乳房の腫れやしこり、痛み、乳房が熱い、赤くなるなどの症状があります。
急な高熱によって、寒気や関節痛などの症状が出る場合もあります。
産後に乳房の症状があって高熱が出たら、まず感染性(化膿性)乳腺炎を疑いましょう。

対処方法

乳腺炎では、様々な対処方法があります。

受診する

乳腺炎の場合は、まずは医師の診察をおすすめします。

なぜかというと、乳腺炎は悪化するのが早いからです。

受診すると、授乳を続けながら服用できる抗生物質を処方されます。
医師から出された薬は、安心して飲むことができますので、途中で飲むのをやめないようにしてくださいね。

または、数日間病院に通って抗生物質の点滴を受けることもあります。
乳腺炎で発熱している場合は、助産院ではなく病院の医師の診察を受けましょう。
薬を出すことができるのは、医師だけです。

抗生物質を使用しながら、次の対処方法をすすめられることが多いです。

授乳姿勢を変える

基本的には、乳腺炎でも授乳しながら治療ができることが多いのです。

授乳中に起こる胸の張りやしこりの正体は?対処はどうするの? image 2

横抱きやたて抱き、フットブール抱きなど色々な姿勢での授乳をするようにすすめられるでしょう。
一つの姿勢で授乳していると、詰まりがある乳腺から飲めなかったり飲みにくかったりすることがあります。

今までと違う姿勢で授乳すると、乳房の張りやしこりが良くなることもありますので、試してみましょう。
「乳腺炎になっている母乳をあげると、赤ちゃんに影響がないか心配」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

でも、大丈夫なんです。

お母さんの身体に何か菌が入ってきたとしても、抗体が作られて菌と戦います。
その抗体が母乳でも作られており、赤ちゃんが母乳を飲むとその抗体が赤ちゃんにも移行するといわれています。
そのため、赤ちゃんが嫌がらない限り母乳を飲ませても大丈夫なのです。

搾乳する

乳腺炎のときには、赤ちゃんが嫌がって母乳を飲まないことがあります。

なぜかというと、炎症反応によって乳質が変化すると言われているからです。
そのために、赤ちゃんがいつもの母乳と違うと感じて飲むのを嫌がったり、乳頭を引っ張ったり、噛んだりするかもしれません。
この場合、母乳を出したいけど出せなくなりますね。

そんなときには、搾乳をしてみてください。
搾乳は、手でも搾乳器を使っても大丈夫です。
搾乳すると痛みがあると思いますので、乳房を動かしながら力を加減して搾ると母乳が出やすいと思います。

乳房を冷やす

乳房が熱いときには冷やしてみましょう。
基本は、炎症があるときには温めないことです。

でも、身体が寒い、保冷剤を当てると気持ちいいけど冷えすぎるというときには、無理をして冷やさなくても大丈夫です。

乳房をほぐす

助産師に乳房のマッサージをしてもらうのも良いでしょう。

乳腺炎を起こすくらいの乳房の張りやしこりは、自分では痛くて触ることができないことが多いです。

受診すると、助産師が乳房のマッサージをしてくれる施設も多くありますので、自分でできる方法も確認しておくと良いでしょう。
一番手軽な方法は、乳房全体をゆっくりとぐるぐる回す方法です。

肋骨から乳房をはがすイメージで、時計回りや反時計回りなど大きく乳房を回してみましょう。

これは、痛ければ効果があるというものではありませんので、力を加減しながらできるといいですね。
やり方がよくわからない、自信がないという方は、動かせる範囲で乳房を動かしてみるという方法でも大丈夫です。

患部の切開

乳房の状態が悪い場合、乳房を切開して排膿することがあります。
乳房の中にうみがたまって、出さないともっとひどい状態になるからです。

切開は、乳腺炎の最終的な治療です。
切開しても乳腺炎になっていない乳房からは、赤ちゃんに授乳できることが多いです。

ただ毎日ガーゼ交換に通う必要があり、赤ちゃんがいながらだとなかなか大変です。
切開が必要なまでにならないように、早めに対処しましょう。

まとめ

胸の張りとしこりの正体、その対処方法についてお話しました。
乳房の張りとしこりには、生理的なものと病的なものがあります。
生理的な範囲であれば、抱き方を変えたり頻繁に授乳をしたりしながら様子を見ても良いでしょう。

でも、乳腺炎の場合は、発熱に注意です。
乳腺炎が疑わ得れるときには、医師の診察を受けることをおすすめします。
早めの対処で、早く乳房の張りやしこりが良くなるといいですね。