妊娠中は妊娠に関するトラブルしか起こらないと思っていませんか?妊娠中でも胸にしこりができることはあるのです。

しこりの原因は妊娠による乳腺の腫れや、乳房のしこりの症状で一番多くみられる乳腺症、良性の腫瘍、乳がんなど、さまざまです。原因によっては一刻も早く適切な治療を開始しなければならない場合もあります。

妊娠中の胸のしこりが痛いときに考えられることについてみていきましょう。

妊娠中にも胸のしこりってできるの?

妊娠中にも胸にしこりができることはあります。胸のしこりとは、乳房の組織である乳腺に、触ったときに硬く触れるものができることです。

胸のしこりは約80〜90%が良性1)のものと言われていますが、妊娠中に乳がんが見つかる例も決して少なくはありません。良性のしこりは触ると動き、弾力があるのが特徴です。

乳がんのしこりは触っても動かず、硬いのが特徴です。妊娠中でも超音波エコーなどの検査を受けることはできますので、気になるしこりを見つけたら自己判断はせずに、かかりつけの産婦人科か乳腺外科に相談しましょう。

妊娠中に胸のしこりがみられ、痛みがある場合に考えられること

妊娠中に胸にしこりがみられ、痛みもあるときに考えられることはどんなことでしょうか。胸のしこりがみられる症状や病気についてみていきましょう。

妊娠中に胸のしこり!しこりが痛いときに考えられることとは image 1

乳がん

乳がんは胸にしこりが触れ、乳房のひきつれや乳頭、乳輪部分のただれや湿疹、乳頭からの分泌物がみられます。リンパ節に転移した場合にはわきの下にしこりができることもあります。炎症性乳がんでは乳房が赤くなり、熱を帯びて痛みが出ることもあります。2)

乳腺症

乳腺症は女性ホルモンのアンバランスによって起こる生理現象であり、病気ではありません。胸のしこりや乳頭からの分泌物、乳房痛がみられます。

妊娠による乳腺の腫れ

妊娠すると女性ホルモンのバランスが大きく変動し、乳腺の腫れがみられることがあります。その腫れがしこりとなって触れ、押すと痛みが出ることがあります。

乳腺炎

乳腺に母乳が溜まったり、感染したりすることで乳腺に炎症が起こる乳腺炎は授乳期に起こることが多いですが、まれに妊娠中に起こることもあります。母乳が詰まって滞っている部分がしこりとして触れ、ズキズキとした痛みや熱感、腫れもみられます。

副乳

妊娠中に脇の下にしこりができて痛いことがあります。生まれつき、退化した乳房(副乳)が残っている人がいて、妊娠中のホルモンの変化によって副乳が腫れて痛みを生じることがあります。授乳期が終わればしこりや痛みは自然になくなります。

乳房の腫瘍

一般的には痛みは出ることは少ないとされていますが、まれに痛みがみられることもあります。

乳腺繊維腺腫

乳腺にできる良性の腫瘍の代表です。胸にしこりが触れることで発見されることが多く、しこりは弾力のあるものから硬いものまであります。しこりが急激に大きくなって乳房の大半を占める大きさまでなることや、まれに乳がんの場合のこともありますので、画像診断のみではなく細胞診も受けると安心です。良性であってもしばらくは経過観察が必要となります。3)

妊娠中に胸のしこり!しこりが痛いときに考えられることとは image 2

葉状腫瘍

胸にしこりが触れることで発見されることが多く、良性、悪性、境界型があります。急激に大きくなる場合が多く、再発を繰り返すと悪性になるリスクが高くなるため、手術で取り除きます。3),4)

脂肪壊死

乳房を強く打った数か月後に硬いしこりや乳房の凹みがみられます。3)

妊娠中に胸のしこりと痛みがみられたら

妊娠中にみられる胸のしこりについてみてきましたが、胸のしこりといっても色々な原因やしこりの種類があります。

私は妊娠中に、しこりのように胸が全体的に張って硬くなり、胸が張ることによって痛みが出ることを体験しました。胸が全体的に硬くなって、時期によって乳房の張りや硬さも変動していたため、妊娠による胸の張りという考えしかなく、乳房の腫瘍や乳がんといった病気を疑いもしませんでした。そもそも、妊娠中に乳がんになるという考えすらありませんでした。

しかし、妊娠中にも乳がんになること、乳房の腫瘍でも悪性のものがあることを知り、日頃からしこりや硬さ、痛みなど、胸の変化を気にする必要があることを改めて感じました。

日頃から胸のチェックを行い変化に早く気づくようにする

妊娠中は特に、女性ホルモンのバランスの変化が起こって胸の変化も起こりやすい時期です。だからこそ、普段から胸のチェックを行い、しこりや痛み、その他の変化に気付けるようにしておくことが大切です。

いつもと違う胸の変化を感じたら産婦人科や乳腺外科に相談を

胸にいつもとは違うしこりや痛み、乳頭からの分泌物などの変化を感じたら、かかりつけの産婦人科か乳腺外科に相談しましょう。なかにはしこりが急激に大きくなるものや悪性のもの、経過観察が必要なものもあります。自己判断で受診の機会を逃さないように早めに行動することが大切です。

1)サワイ健康推進課 乳がんと間違えやすい病気 Link
2)がん情報サービス 乳がん Link
3)東海大学医学部外科学系乳腺内分泌外科 Link
4)日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン Link