妊娠すると胸が張るというのは一般的によく言われていることです。妊婦健診で産婦人科にかかるときにも医師から「胸は張る?」と聞かれることもありますよね。
妊娠初期の症状として「妊娠しているのに胸が張らない。でも胸の痛みはある。」ということで悩む妊婦さんも多いようです。一般的な症状に自分の症状が当てはまらないと、心配になりますよね。
今回は妊娠中にみられる胸の痛みについて、原因や妊娠の影響以外に考えられる病気について説明しています。
妊娠中の胸の痛み
妊娠初期にみられる胸の症状として、胸の張り以外に、胸の痛みの症状がみられることがあります。妊娠するとプロゲステロンとエストロゲンの二つの女性ホルモンが増加して、女性ホルモンの濃度が高くなります。乳腺や乳管が拡がって水分が乳房に蓄えられやすくなり、乳房全体が痛んで、押さえると痛みが強くなることがよくみられるようです。1)
妊娠時の胸の痛みの症状は、胸が張って痛いという他にも、乳首が痛い、乳首のチクチクした痛みがある、衣服に乳首が擦れてヒリヒリ痛む、乳房の中がチクチクと痛い、乳房の奥がジンジンと痛いなど、胸の痛みの現れ方もさまざまです。妊娠初期には乳首のチクチクとした痛みや乳首が張って大きくなり、衣服に擦れて痛いという乳首の症状もよくみられる症状です。
妊娠時の胸の痛みの原因とは
胸の痛みの症状が現れるのは、妊娠して女性ホルモンの分泌の変動が起こることが関係しています。
妊娠するとエストロゲンとプロゲステロンの二つの女性ホルモンは増加していきます。女性ホルモンが高値となることで乳腺や乳管の変化がみられて乳房や乳首の痛みが生じます。下着による圧迫や身体の疲れ、心理的なストレスが影響して、胸の痛みなどの症状が強く現れることもあります。
胸を圧迫せず、肌に優しい素材の下着をつけて、十分に休養をとり、ゆったりとした気持ちで過ごすようにしましょう。
胸の張りと胸の痛みの関係
妊娠時の胸の張りも胸の痛みと同じく、妊娠による女性ホルモンの変動によって起こる症状とされています。乳房は脂肪と乳腺組織とでできていますが、脂肪の量も乳腺の密度や乳腺の乳房内での分布の仕方も人によって異なるので、胸の張りも胸の痛みも症状の出方には個人差があります。2)
あまり胸の張らない方もいれば、胸の張り方に違いがある場合もあり、胸の痛みがみられない方もいます。胸の張りは感じないのに、乳首の痛みや乳房の痛みがあるといった場合もあるでしょう。
私自身の体験談をお話しすると、妊娠初期に胸の張りはありましたが、胸の痛みはなく、脇の痛みを感じました。また乳首の痛みはなく、乳輪のかゆみがありました。胸の痛みの症状は人それぞれ現れ方や感じ方は異なりますが、中には妊娠によるものではない場合もあります。
胸の痛みがみられる時に考えられる病気
胸の痛みがみられる場合には副乳や乳腺症、乳腺炎、乳房の腫瘍などの場合もあります。妊娠中でもこれらの症状や病気が認められる場合がありますので、胸の痛みで気になる場合にはかかりつけの産婦人科や乳腺外科を受診し、相談しましょう。
副乳
乳房以外のわきの下や乳房の下側などに乳腺組織が生まれつき存在していて、乳腺が腫れて痛む場合があります。私が出産で入院していたとき、同室だった方が妊娠すると副乳が腫れて痛いと言われており、本当に辛そうでした。妊娠して女性ホルモンの分泌が増加し、乳腺組織が発達すると副乳の乳腺組織も腫れて痛むことがあるようです。
腺症
女性ホルモンの影響、とくにエストロゲンの分泌が過剰になることで乳腺の変化がみられ、2)乳房の痛みやしこり、張りなどがみられる症状です。女性ホルモンの影響で身体が水分を蓄えやすい状態になると乳管に水が溜まり、乳腺嚢胞ができることもあります。乳腺嚢胞ができた場合には局所的な乳房の痛みが生じます。3)
乳腺炎
授乳中に起こることが多い乳腺炎ですが、妊娠期に乳管に母乳が溜まって炎症を起こり、乳腺炎になることもあります。細菌感染を起こして乳腺が炎症を起こす場合もあります。乳腺炎の場合は胸の痛みと腫れ、赤みや熱などの炎症症状がみられます。
乳房の腫瘍
乳房の腫瘍には線維腺腫、葉状腺腫、乳がんなどがあります。胸のしこりや痛み、乳頭から白色や赤色、黒っぽい色などの分泌物がみられる場合、乳頭や皮膚のひきつれやくぼみなどがみられる場合は医療機関を受診して必要な検査を受けましょう。
1)MSDマニュアル 家庭版 乳房の痛みLink
2)徳島県医師会 乳腺症Link
3)株式会社日立保険サービス 乳腺症Link