妊娠すると胸が張る、胸が張って痛いという症状は一般的によく言われている情報です。胸の張りや胸の痛みで妊娠がわかったという人も少なくありません。

生理前に胸の張りや痛みを感じる人も多く、生理前の症状と比べて、妊娠しているかどうかの判断基準にする人もいるようです。生理前には胸が張って痛いのに、胸の張りがあるのに痛くないとなると、いつもと違う症状に不を感じてしまいますよね。

妊娠すると胸の張りがあるのに痛くないということはあるのでしょうか。

妊娠するとみられる胸の張りと痛み

妊娠すると胸の張りや胸の痛みがみられる人もいますが、具体的にはどのような症状がみられるのでしょうか。

胸の張りとは

よく、胸の張りと表現されますが、具体的には、胸の硬さが増して全体的に張りつめている、胸の大きさが大きくなって皮膚がピンと張っている、何か胸がいつもと違う、違和感がある、脇の方がつっぱるなどの症状がみられます。私の場合は、何だか胸が気になり、押さえると痛い、脇がつっぱるという症状がありました。

妊娠すると胸の張りがあるけど痛くないってことはある? photo 1

胸の痛みとは

胸の痛みについては、胸が張りすぎて痛みを感じるという以外にも、胸の中がチクチクする、乳首が痛い、乳首がヒリヒリする、脇が痛い、歩いていて胸が揺れたり、うつ伏せになったりして胸が圧迫されると痛いというような症状がみられます。私の場合は、胸が圧迫されると痛い、乳首は痛いというよりかゆいという症状がみられました。

胸の張りや痛みの出方

胸の張り方や痛みは、左右の胸に両方出る人もいれば、片方だけにみられる人、胸の外側だけ、または内側だけにみられる人などさまざまです。私の場合は左右差があり、妊娠前には右の胸にとくに張りや痛みを感じていました。

生理前と妊娠した時の胸の張りや痛みの違い

生理前にも胸の張りや痛みの症状がみられる人もいます。胸の症状は、生理周期による女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が変動することで起こるとされています。

生理前の胸の張りと痛み

生理前の症状は、月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)とも呼ばれ、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が増加した後に急激に低下することで脳内ホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすこと、ストレス、環境などの影響を受けて起こる1)とされています。

生理前の症状は女性全員にあるわけではありません。胸の張りや痛み、お腹の張りや腰痛、頭痛、手足のむくみなどの身体的な症状と、落ち込み、イライラする、不安、混乱、引きこもり、怒りっぽいなどの精神的な症状のうち、何らかの症状がある人は月経のある女性の約70〜80%にみられるとされています。症状は生理前の3〜10日間続き、生理が始まると症状は軽減するかなくなります。2)

妊娠すると胸の張りがあるけど痛くないってことはある? photo 2

妊娠したときの胸の張りと痛み

妊娠した時も生理前と同じように女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が増加します。生理前では2つのホルモンの分泌が増加した後、急激に分泌量が低下しますが、妊娠した場合には2つのホルモンの分泌量は低下することなく増加し続けます。

出産に向けて女性ホルモンが増加し、乳腺、乳管などの乳房の組織が発達して乳房のサイズや重さが増大するのに伴い、胸の張りや痛みの症状がみられます。胸の張りは、ホルモンの分泌が増え始める妊娠が判断できる前の超妊娠初期や、乳房のサイズが著しく大きくなる12週前後、再び急激な乳房のサイズの増大がみられる妊娠後半の28〜32週頃3)にみられることが多くなります。

生理前と妊娠したときの胸の症状の差

生理前と妊娠したときの胸の張りや痛みの症状を比べても、生理前には胸が張って痛いのに妊娠したときには胸の張りがなかったという人もいれば、生理前は胸が張ることはないのに妊娠したときは胸が張った、妊娠したときの方が生理前よりも胸の張りも痛みも強かったなどさまざまで、人によって異なるもので胸の張りだけで妊娠を判断することは難しいです。私の場合は、生理前よりも妊娠がわかる前の方が胸の張り、痛みとも強かったです。

妊娠したときに胸の張りのみの症状の場合

胸の張りや痛みの症状は、生理前と妊娠時でも異なり、人によっても症状の出方は変わります。痛みはなくても胸の張りだけある人もいます。何もしていないときには痛くはないけれども、胸を押すと痛いという場合もあります。胸の張りと痛みはセットになってみられることもありますが、そうではない場合もあるのです。

胸の張りや突っ張りとともに、しこりがみられた場合には注意が必要です。妊娠中はとくに胸の張りの症状があるため、しこりがあったとしても気がつきにくい状態にあります。胸の張りの症状で気になることがあれば、産婦人科の主治医や乳腺外科で相談しましょう。

1)公益財団法人 日本産科婦人科学会 月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)Link
2)菊池新 高槻病院院内学習会2015『乳房の解剖と母乳分泌の生理』Link
3)堀井満恵ら 妊娠経過に伴う乳房の発育状況と泌乳との関係 富山医科薬科大学 看護学会誌 第1号 1998 Link