乳腺炎の発症頻度は3〜20%と言われています。1)数字で見ると乳腺炎にならない人の方が多いと言えますが、乳腺炎は、適切な対処を行わないまま放っておくと、外科手術が必要になることもあります。
私自身も三人の子どもの授乳で毎回、乳腺炎に悩まされました。40度近い高熱が出て動けなくなったことや休日に助産院に駆け込んで乳管の詰まりをとってもらったこともあります。
乳腺炎になると胸の痛みや違和感で非常に辛い思いをします。一度なると繰り返しなることも多く、乳腺炎にならないための予防が大切です。
今回は、乳腺炎の予防法として文献に示されていることや私自身が実際に行って良かった予防法について皆さんと一緒にみていきたいと思います。
授乳中の女性が乳腺炎になる原因
母乳育児の促進・保護・支援を目的に、1993年に医師のグループによって設立されたAcademy of Breastfeeding Medicine(ABM)が提唱する乳腺炎の原因は以下の通りです。1)
- 授乳回数が少ない
- 授乳間隔が空く
- 赤ちゃんが母乳を吸う力が弱いなどで効率的な授乳が行えていない
- ミルクの与え過ぎ
- 母乳の過剰な分泌
- 急な断乳
- きついブラジャーなど、乳房の圧迫
- 乳頭の白斑、乳管の閉塞
- 乳頭の損傷
- 母親のストレス、疲労
- 母親や赤ちゃんの病気
乳腺炎にならないための予防法
上記の乳腺炎になる要因からみると、乳腺炎にならないための予防法として以下のことが挙げられます。
- 赤ちゃんがお母さんの母乳を適切に吸い、効率よく飲むことができる授乳体勢や授乳の方法を習得すること
- ミルクのあげすぎや授乳間隔が空くことのないように、赤ちゃんが母乳を欲しがるペースに合わせて頻回に授乳を行うこと
- 母乳が過剰に分泌され、乳房が張るときは授乳前後に搾乳を行って対処すること。(搾乳のし過ぎが過剰な分泌につながることもあるので搾乳のし過ぎには気をつける。)
- 乳房の痛みやしこり
- 赤み
- 熱感など、いつもと違う兆候がないか乳房のチェックを行うこと
- 乳頭の白斑や乳管の閉塞をみつけたら乳頭マッサージなどで取り除くことができるように対処法を学んでおくこと
- 乳房のいつもの違う状態から24時間以内に乳房の状態が改善しない場合、また、乳頭が傷ついたとき、授乳がうまくいっていないと感じたときは早めに医療機関や助産師に相談し、適切な対処を行うこと2)
- 乳頭を損傷しないように、赤ちゃんの口が深く乳頭を含むようにし、同じ方向ばかりから吸うことのないように気をつけること
- 急な断乳は避けること
- きついブラジャーなど、乳房を圧迫する下着は身に着けないこと
- お母さんが十分に休息をとり、ストレスをためないこと
- 黄色ブドウ球菌などからの感染予防のため、お母さんの手や乳頭、搾乳器などを清潔に保つこと
乳腺炎の予防に食事内容は関係ある?
文献では、「特定の食事内容が乳腺炎のリスクになるエビデンスはない」1)とありますが、乳腺炎と食事の関連について考えていきましょう。
日本の多くの産院では、授乳をする母親に対して、食事内容の指導が実施されています。
授乳時には、脂ものや甘いお菓子は避けて、和食中心の食事をとるとよいと、一般的には知られていますよね。和食は脂っぽいものが少なく、栄養をバランスよくとることができます。みそ汁などの汁物は、水分を補給して身体を温め、母乳の出をよくすることを促します。
私自身、二人目を出産した産院はフランス料理が出る産院でしたが、一人目出産時に乳腺炎を経験したことを伝えると、食事は残すつもりで食べ過ぎないように注意を受けました。デザートにチョコブラウニーやオレンジジュースが出たのですが、誘惑に負けて「少しだけ」と食べてしまったら、あっという間に乳房がパンパンに張り、ものすごく後悔したことを覚えています。
三人目の授乳時には、口にするものひとつで乳房の状態が左右されることを身にしみて感じました。クッキーを一口かじっただけ、グラタンを少し食べただけでも乳房がカチカチに張り、本当に辛い思いをしました。そのため、脂ものやバター、生クリームなど、こってりとしたものが入っている食事は避けて、ひたすら温野菜と豆と米中心の食事を続けていました。
こうして自分の経験や、助産師さん、看護師さんから指導を受けたことを振り返ってみると、食事内容は乳腺炎に関連すると言ってよいのではないでしょうか。
しかし、産院で同じ料理を食べていても乳房の張りに影響がない方もいらっしゃいましたので、個人差があります。私のように乳腺炎になりやすい方、繰り返しやすい方は、乳腺炎の予防のために、食事内容にも気をつけるに越したことはないと言えるでしょう。
参考文献