妊娠初期、妊娠後期には胸が張る症状がみられます。胸が張る症状は妊娠による女性ホルモンの変動によって起こり、母乳をつくる準備のために乳腺が発達することや、乳房への血液供給が多くなり、水分が蓄えられることで胸の張りが生じます。
妊娠中の胸の張りの症状が片方だけに限定してみられることはあるのでしょうか?左だけ、もしくは右だけ胸が張るという症状が起こったら、なぜ片方だけ?と不安にもなりますよね。今回は妊娠中に片方だけ胸が張ることはあるのか、不安になった時にどう対処すればよいのかについて確認していきたいと思います。
妊娠中に片方だけ胸が張ることはある
胸の張りには個人差があるため、妊娠中に片方だけ胸が張るということもあります。生理前に胸が張る時にも、片方だけ胸が張って痛むということもみられます。全員が両方の胸が張る、片方の胸が張るというように、症状が固定されているわけではなく、人によって両方の胸が張ったり、右が強く張ったり、左だけが張ったりします。
左右の胸の大きさに多少なりとも違いがあるように、人間の身体は左右差があるものです。乳腺の発達の仕方や乳腺の詰まりやすさなどにも左右差はあり、胸の張りの症状の出方が左右で異なることもあります。
胸が張る側と胸のサイズとの関係
私は普段、生理前には右の胸が張りやすいのですが、妊娠初期のまだ妊娠が判明していない時期に、普段より強い胸の張りを感じたのも右の胸でした。出産してからは三人の子どもの授乳中に乳腺炎に繰り返しかかったのですが、三回ともすべて乳腺炎になったのは右の胸でした。
実は左右の胸の大きさを比較すると、サイズが大きいのは左の胸なのです。胸が大きい方が乳腺もたくさん発達していそうですし、張ったり、詰まったりしそうなものですが、なぜか、張ったり、詰まったりとトラブルが多いのは小さい右の胸でした。
胸が大きいからといって胸が張りやすい、詰まりやすいということはないようです。胸のサイズとは関係なく、胸が張りやすい側があるようですね。
片方だけ胸が張って不安になったら
妊娠中にみられる胸の張りの症状として、胸が張って痛い、乳頭が痛い、乳房がズキズキ・チクチクする、脇が痛いなどの症状がありますが、片方だけにみられる場合もあります。
もし、片方だけ胸が張り、不安になったときには、妊娠の診断を受けた後であれば、かかりつけの産婦人科に受診、相談するとよいでしょう。不安なまま過ごしていてもストレスになりますので、かかりつけの産婦人科がある場合には電話でまず症状を相談してみるのもよいですね。
片側だけ胸が張る症状で考えられること
妊娠がまだわかっていない状態で、片方の胸だけ張って気になるという場合は、産婦人科や乳腺外科を受診し、相談するとよいでしょう。なかには、妊娠中に片側だけ胸が張って痛み、高熱が出るという症状で産婦人科を受診すると、乳腺炎だったという例もあるようです。珍しい例ですが、妊娠中でも母乳を出す準備が整っていれば乳腺炎になる可能性もあります。1)
他にも、妊娠中であっても乳腺症や乳腺線維腺腫、乳がんなどがみつかることもあります。妊娠中であっても、胎児を診るためにも使用されている超音波検査(乳腺エコー)や細胞診・針生検などは、放射線による被ばくの影響を受けずに検査することができます。マンモグラフィ検査は放射線を使用しますが、必要であれば、腹部を保護して受けることもできます。
妊娠中に片方の胸の張りとしこりなどの気になる症状を見つけたら、かかりつけの産婦人科、乳腺外科や乳腺外来を受診し、相談しましょう。2),3),4),5)
胸の張りをおさえる食事と生活
妊娠すると女性ホルモンの働きで乳腺が発達し、母乳をつくるための準備が整えられます。女性ホルモンの分泌のバランスが崩れることや、血流が滞ってむくみにつながると胸の張りが強くなることもあります。妊娠中でも乳腺炎になる例があるように、母乳の源となる血液がドロドロになると乳腺のトラブルにもなります。ホルモンバランスやむくみ、血液の状態を良くする食事と生活を心がけましょう。
胸の張りを抑える食事
肉・魚・卵・大豆などのたんぱく質で主菜を、ビタミンが豊富な野菜や果物、ミネラルや無機質、食物繊維が豊富な海藻やきのこを使って副菜を、乳製品からカルシウムをとり、米などの穀物を主食として栄養バランスの良い食事をとるように心がけましょう。脂質や甘いものは摂り過ぎると血液がドロドロになって乳腺が詰まり、胸が張りやすくなります。甘いお菓子も控えたいですね。
また、油をたくさん使う調理方法は避けて焼く、蒸す、煮るなどの工夫をするのもよいでしょう。塩辛いものは食べると身体のむくみを起こすので、塩分も控えましょう。6)
胸の張りを抑える生活
ストレスを抱えていたり、睡眠不足であったりするとホルモンバランスが崩れやすくなり、胸の張りが強くなることもあります。お気に入りのリラックス法や適度に身体を動かすことでストレスをうまく対処しましょう。
適度に動くことは血流を良くし、むくみの予防にもなります。妊娠中、状態によっては安静にした方がよい場合もあるので、運動を行う前には主治医に確認すると安心です。
1)ゼクシィBaby みんなの体験記 めったにない出産前の乳腺炎! Link
2)日本乳癌学会 患者さんのための乳がん診療ガイドライン Link
3)メディカルプラザweb 乳がんプラザ 妊娠6ヶ月 急に左乳房に乳腺炎のような腫れと痛み Link
4)メディカルプラザweb 乳がんプラザ乳房の張り・大きさの左右差があります Link
5)公益社団法人京都保健会 京都民医連中央病院 病院報 2016年夏号 Vol.52 ほんとはこわくない『乳房の痛み』Link
6)姫路市 妊娠中の栄養について Link