1歳を目前に、「そろそろ卒乳のことを考えないと・・・」と思っているお母さんもいらっしゃることでしょう。
生後10ヶ月頃に自然に卒乳したり、お母さんが卒乳に向けて働きかけてすんなり卒乳できたりすることがあります。
そんなとき、「母乳の代わりに牛乳を与えてもいいのかしら」「そもそも離乳食だけではだめなのかしら」と、母乳に代わる何かを与えるのか、与えるとしたら牛乳で良いのかと迷うお母さんは多いです。

ここでは、そんな疑問にお答えします。
生後10ヶ月で卒乳したときの母乳の代わりについてお話していきましょう。

生後10ヶ月の赤ちゃんの離乳食

生後10ヶ月の赤ちゃんは3回食になり、1日の栄養の約60%を食事から、約40%を母乳やミルクから摂っています。

月齢
1日の食事の回数
食事の割合
母乳・ミルクの割合

5-6ヶ月
1回
20%
80%

7-8ヶ月
2回
40%
60%

9-11ヶ月
3回
60%
40%

12-18ヶ月
3回とおやつ1回
80%
20%

次に、この頃の赤ちゃんの胃腸の状態をご説明します。

生後10ヶ月の赤ちゃんの胃腸の状態

この頃の赤ちゃんは、離乳食が順調に進み、離乳が後半から完了期になるにつれて、だんだんと消化能力も高まってきます。
便の水っぽさは少なくなり、匂いや形も大人に近づいて来る頃で食べたものがそのまま便に出ることも少なくなってきます。
排便の回数は1日1?2回程度なることが多く、その赤ちゃんなりのペースで排便するようになります。
一方で、生後10ヶ月の赤ちゃんは胃腸の消化機能が未熟なため、火が通っていない牛乳や生もの、はちみつなどはまだ食べられません。

1歳未満の赤ちゃんに牛乳は与えない

厚生労働省発表の「授乳・離乳の支援ガイド」によると、牛乳は1歳以降に与えるのが望ましい」とされています。
理由は下記の通りです。

胃腸の負担になる

母乳と牛乳の栄養素を比較すると、母乳には乳糖と呼ばれる炭水化物が牛乳の1.5倍含まれ、たんぱく質やカルシウムなどのミネラルが牛乳の約3分の1であるなど、栄養成分の比率が違います。
このことから、1歳未満で牛乳を与えると赤ちゃんの胃腸の負担になってしまいます。

生後10ヶ月で卒乳!母乳の代わりに牛乳を与えもいい? photo 1

アレルギーになる可能性がある

1歳未満の赤ちゃんの消化能力は、まだ十分ではありません。
牛乳に含まれているたんぱく質の分子は大きく、分解することができないのです。
十分に分解されていないたんぱく質の成分を吸収すると、アレルギー症状を引き起こしてしまう可能性が高まります。

鉄欠乏性貧血になりやすい

必要以上に牛乳を飲むと、牛乳に含まれるカルシウムが鉄分の吸収を妨げる可能性がありますので、注意が必要です。

牛乳の与え方

火が通っていない牛乳は、1歳未満では与えないようにしましょう。
では、生後10ヶ月頃には、どのように牛乳を与えるとよいのかいくつかの工夫を説明します。

料理に利用する

ミルクスープやシチューなどに利用すると、火が通った状態で牛乳を与えることになるため問題ないでしょう。

一度にたくさん与えない

赤ちゃんが食べる1食分の料理に、牛乳を使用する分には問題ないでしょう。
でも、初めての食材は少量から与えるようにしてくださいね。

牛乳は母乳の代わりにはならない

下の表に、牛乳・母乳・ミルク・フォローアップミルクの栄養比較をまとめました。

母乳100g・育児用粉ミルク・フォローアップミルク・牛乳100mlあたりの栄養成分

栄養成分
母乳
育児用粉ミルク
フォローアップミルク
牛乳

エネルギー
65
67
66.6
67

タンパク質
1.1
1.61
2.0
3.3

脂質
3.5
3.6
2.8
3.8

炭水化物
7.2
7.16
8.4
4.8

カルシウム
27
55
84
110

生後10ヶ月で卒乳!母乳の代わりに牛乳を与えもいい? photo 2

ビタミンD
0.3
0.9
0.7
0.3


0.04
0.78
1.12
0.02

和光堂ホームページ 赤ちゃん通信No.21「もっと知りたいフォローアップミルク」より引用
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母乳と育児用粉ミルクの比較

この表から、母乳と育児ミルクは、栄養成分が似通っていることがわかります。
しかし、カルシウムやビタミンD、鉄分の含有量は育児用粉ミルクの方が多いですね。
これは、育児用粉ミルクは母乳にできるだけ近い組成にしつつ、母乳に比較的少ないと言われている栄養素を添加しているからです。

フォロアップミルクと育児用粉ミルクの比較

フォローアップミルクと育児用粉ミルクを比較してみると、フォローアップミルクはたんぱく質、炭水化物、カルシウム、鉄分が多く含まれています。
このようなことからもフォローアップミルクは、栄養が豊富だと思われがちですが、銅や亜鉛などのミネラル分が全く入っていないのです。

銅は鉄から赤血球が作られるのを助ける働きがあり、亜鉛は酵素を作る成分になり、皮膚や粘膜の健康維持を助ける働きがありますので、赤ちゃんにもとても必要な栄養素なのです。
他のミネラル分も体に必要な成分ですので、摂れないと困りますね。
また、離乳食をよく食べている場合にフォローアップミルクを与えると、たんぱく質の摂り過ぎにつながる可能性があるのです。

牛乳は鉄の吸収が悪い

牛乳は、栄養素としてはカルシウムやリンが豊富ですが、1歳過ぎてからでないと与えられません。
栄養素としては問題ないのですが、生後10ヶ月頃は、鉄欠乏性貧血になりやすい状態です。
カルシウムやリンは、それ自体とても重要な栄養素なのですが、鉄分の吸収を抑さえる働きがあることがわかっていますので、生後10ヶ月頃の赤ちゃんに牛乳を必要以上に与えるのは良くないとされています。

母乳の代わりは育児用ミルク

結論は、母乳の代わりになるのは育児用粉ミルクです。
それは生まれたてのときからかわりません。
育児用ミルクは母乳の代用品として開発されており、母乳に近い栄養素を取り入れています。
生後10ヶ月の赤ちゃんで、離乳食も順調に進んでいるようなら、そのまま母乳を与え続けるのが理想です。
母乳とミルクを与えていた方も、これまで通り母乳とミルクを与えるのが理想です。
しかし、「自然に卒乳してしまった」「どうしても卒乳する必要がある」「母乳が出ない」などの状態の方もいらっしゃるでしょう。
そのようなときには、母乳の代わりに育児用粉ミルクを与えるようにしましょう。

また、離乳食をあまり食べず、鉄分不足の可能性がある場合は、フォローアップミルクを与えると良いでしょう。
食事の回数、量、ミルクの回数、健康状態により違ってきますが、育児用粉ミルクも併用したほうが良いことがありますので、心配なときには小児科医に相談しましょう。

まとめ

生後10ヶ月で卒乳した後に、母乳の代わりに牛乳を与えるのはやめておきましょう。
腸への負担やアレルギー、栄養の問題があります。
母乳の代わりには、育児用粉ミルクと必要に応じてフォローアップミルクを与えるようにしましょう。
赤ちゃんの栄養には何かと気を遣いますよね。

どうするのが良いか不安な場合は、医師や栄養士、助産師に相談してみましょう。

授乳・離乳支援ガイド2007年 厚生労働省
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和光堂ホームページ 赤ちゃん通信No.21「もっと知りたいフォローアップミルク」より引用
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