妊娠中期に胸が痛いときに考えられることとは

妊娠中は女性ホルモンの分泌の変動によって、女性の身体は大きく変化する時期です。 お腹や胸、腰、肩など全身にいろいろな身体症状もみられます。妊娠中期の胸の痛みは何が原因で起こるのでしょうか。 妊娠中期の時期に起こる身体の変化と、胸の痛みがみられたときに考えられることについてみていきましょう。 妊娠中期とは 妊娠中期は、妊娠5〜7カ月(16〜27週)の安定期に入った頃です。つわりもおさまって、体調が落ち着く人が多い時期ですが、だんだんお腹や胸などが大きくなって身体が丸みを帯びてきます。赤ちゃんの胎動を感じるようになる時期でもあります。 妊娠中期にみられる胸の痛み 妊娠中期にみられる胸の痛みは、以下のことが考えられます。 妊娠による女性ホルモンの変動 胸の張りや胸の痛みの症状は女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの分泌の変動が関係していると考えられています。妊娠が成立してから出産までエストロゲンとプロゲステロンの分泌は増加し続けるので、妊娠中期にも胸の張りや胸の痛みといった症状が見られます。胸の張りの症状は妊娠初期に自覚する方が多いですが、妊娠中期、妊娠後期にも見られます。 肋間神経痛や胸の筋肉の痛み 妊娠中期ごろには肋間神経痛や胸の筋肉の痛みで胸が痛いという症状が見られることがあります。妊娠中の乳房のトップ周囲値とアンダー周囲値の変化を調査した研究では、妊娠中期にあたる16〜28週ではアンダー周囲値が約5センチ大きくなるとされています。 アンダー周囲値が大きくなる理由としては、胎盤が完成し、赤ちゃんが大きく発育していく時期であるため、子宮が大きくなるとともに子宮底が上に上がり、胃や横隔膜が押されることが関係していると考えられています。1)胃や横隔膜とともに肋骨が押し広げられて胸の筋肉が引き伸ばされ、痛みが出ることや、肋間神経が圧迫されて痛みが出ることが考えられます。 お腹や胸が大きくなり、体形が変わることで姿勢のとり方も変化します。運動をする機会が減って筋肉量の減少や筋力が低下し、体勢を変えるときや動作開始時に胸の筋肉に負担がかかって痛みを誘発することもあります。 肋骨の骨折 妊娠中期には子宮が大きくなるとともに内臓や肋骨に圧がかかります。胎動も出てくる頃で、胎動の負荷も肋骨にかかります。骨粗しょう症などがあると骨折のリスクが高くなります。強く胸を打つなどのきっかけがなくても負担が重なって疲労骨折を起こし、肋骨にひびが入って胸の痛みが出ることがあります。 周産期心筋症などの心疾患 妊娠から産褥期にかけて、心不全の既往のない女性が心不全を発症し、心臓の機能低下をきたす周産期心筋症という病気があります。7割は産後の発症ですが、妊娠中期にあたる妊娠20〜27週にも3%が心不全を発症しています。2) 妊娠してから急に心不全を起こすこともあるので、心疾患から起こる胸の痛みには注意が必要です。心不全の症状は胸の痛みのほかに、息切れや咳、むくみ、倦怠感、動悸、体重増加などの症状が見られますが、妊娠中の変化としても見られる症状のため、心不全によるものか、妊娠によるものか、判断が付きにくいかと思います。 狭心症や心筋梗塞、心膜炎などの心疾患でも胸の痛みがみられることがありますので、気になる胸の痛みがあれば産婦人科や循環器内科、心臓血管外科などを受診しましょう。 帯状疱疹 水疱瘡にかかったことがある人は、帯状疱疹ウイルスが神経に潜んだ状態です。何らかの誘因によって、潜んでいた帯状疱疹ウイルスが活性化すると帯状疱疹を発症します。肋間神経に帯状疱疹ウイルス入り込むと、赤い発疹や水泡が胸の神経が走っている部分に沿って帯状に出現し、ピリピリとした痛みが生じます。 帯状疱疹の治療は抗ウイルス薬が用いられますが、妊娠中の服用については十分に医師と相談する必要があります。 逆流性食道炎 胃液や胃の内容物が食道に逆流して、炎症が起こり、食道がただれたり、潰瘍ができたりします。妊娠中期には子宮が大きくなる影響で胃に圧がかかり、食道への逆流が起こりやすくなります。胃酸の酸っぱい液が口まで上がってくる場合や、胸やけ、胸の痛み、げっぷ、喉の違和感などの症状が見られます。妊娠時には、つわりの症状と区別がつきにくいですが、いつもとは違う気になる症状があれば、かかりつけの産婦人科に相談するか消化器内科を受診しましょう。 胸のしこり 乳腺が発達して症状が出る乳腺症や乳腺炎、胸の良性のしこり、乳がんなどでも胸の痛みが出ることがあります。 1)新川治子ら 現代の妊婦のマイナートラブルの種類,発症率及び発症頻度に関する実態調査 日本助産学会誌 J. Jpn. Acad.…

妊娠中の痛い胸の張り。胸が張る仕組みと対処法を解説

妊娠中に経験する方も多い胸の張り。痛いと感じるほどに胸が張る人もいます。私も妊娠がわかる前には胸が張って痛い思いをした経験者の一人です。 妊娠したら胸が張るという情報は耳にしたことことがあっても、なぜ胸が張るのかということまではなかなか知る機会がないですよね。今回は、妊娠中に胸が張る仕組みと、痛い胸の張りの対処法について一緒に学んでいきましょう。 妊娠中の胸の張りの原因 妊娠中に胸が張るのは女性ホルモンの分泌の変化によるものです。女性の月経期→卵胞期→排卵期→黄体期からなる月経周期では、2つの女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の分泌量の周期的な変化がみられます。 エストロゲンの分泌と作用 エストロゲンは、発育した卵胞から分泌されるホルモンで、卵胞ホルモンとも呼ばれます。月経が終わった後から排卵前にかけてと、排卵後から月経前まで分泌量が増加します。 エストロゲンは女性らしい身体をつくるホルモンで、以下のような作用を持っています。 排卵と妊娠の準備のために子宮内膜を厚くする 肌のツヤやハリをよくする 髪の毛のツヤをもたらす 骨粗しょう症の予防 動脈硬化の予防 記憶力を促す 基礎体温を下げる など… プロゲステロンの分泌と作用 プロゲステロンは、黄体(排卵後の卵胞)から分泌されるホルモンで黄体ホルモンとも呼ばれます。排卵後から月経前まで分泌量が増加します。 プロゲステロンは受精卵が着床する準備を整え、妊娠の継続をサポートするホルモンで、以下のような作用があります。 水分を身体に蓄える むくみが生じる 吹き出物ができやすくなる 基礎体温を上げる 胸が張る 精神が不安定になる など… 胸の張りが起こる仕組み 月経期から排卵後にかけては、プロゲステロンよりもエストロゲンの分泌が優位となる時期です。ちょうど月経前となるこの時期に胸の張りを感じる方も多いのではないでしょうか? 胸の張りがみられるのは、プロゲステロンの水分を溜め込む作用によって、乳房に水分が蓄えられ、むくみが生じた状態になるためということが言われています。 また、女性ホルモンの分泌はストレスの影響を受けて変化しやすくなります。疲れや睡眠不足、食生活の乱れなどがあると、エストロゲンとプロゲステロンの2つのホルモンのバランスが崩れ、胸の張りの症状がみられることもあります。1) 妊娠すると女性ホルモンが大幅に増加する…

妊娠しても胸が張らないけど胸は痛い。胸の張りと痛みの関係とは?

妊娠すると胸が張るというのは一般的によく言われていることです。妊婦健診で産婦人科にかかるときにも医師から「胸は張る?」と聞かれることもありますよね。 妊娠初期の症状として「妊娠しているのに胸が張らない。でも胸の痛みはある。」ということで悩む妊婦さんも多いようです。一般的な症状に自分の症状が当てはまらないと、心配になりますよね。 今回は妊娠中にみられる胸の痛みについて、原因や妊娠の影響以外に考えられる病気について説明しています。 妊娠中の胸の痛み 妊娠初期にみられる胸の症状として、胸の張り以外に、胸の痛みの症状がみられることがあります。妊娠するとプロゲステロンとエストロゲンの二つの女性ホルモンが増加して、女性ホルモンの濃度が高くなります。乳腺や乳管が拡がって水分が乳房に蓄えられやすくなり、乳房全体が痛んで、押さえると痛みが強くなることがよくみられるようです。1) 妊娠時の胸の痛みの症状は、胸が張って痛いという他にも、乳首が痛い、乳首のチクチクした痛みがある、衣服に乳首が擦れてヒリヒリ痛む、乳房の中がチクチクと痛い、乳房の奥がジンジンと痛いなど、胸の痛みの現れ方もさまざまです。妊娠初期には乳首のチクチクとした痛みや乳首が張って大きくなり、衣服に擦れて痛いという乳首の症状もよくみられる症状です。 妊娠時の胸の痛みの原因とは 胸の痛みの症状が現れるのは、妊娠して女性ホルモンの分泌の変動が起こることが関係しています。 妊娠するとエストロゲンとプロゲステロンの二つの女性ホルモンは増加していきます。女性ホルモンが高値となることで乳腺や乳管の変化がみられて乳房や乳首の痛みが生じます。下着による圧迫や身体の疲れ、心理的なストレスが影響して、胸の痛みなどの症状が強く現れることもあります。 胸を圧迫せず、肌に優しい素材の下着をつけて、十分に休養をとり、ゆったりとした気持ちで過ごすようにしましょう。 胸の張りと胸の痛みの関係 妊娠時の胸の張りも胸の痛みと同じく、妊娠による女性ホルモンの変動によって起こる症状とされています。乳房は脂肪と乳腺組織とでできていますが、脂肪の量も乳腺の密度や乳腺の乳房内での分布の仕方も人によって異なるので、胸の張りも胸の痛みも症状の出方には個人差があります。2) あまり胸の張らない方もいれば、胸の張り方に違いがある場合もあり、胸の痛みがみられない方もいます。胸の張りは感じないのに、乳首の痛みや乳房の痛みがあるといった場合もあるでしょう。 私自身の体験談をお話しすると、妊娠初期に胸の張りはありましたが、胸の痛みはなく、脇の痛みを感じました。また乳首の痛みはなく、乳輪のかゆみがありました。胸の痛みの症状は人それぞれ現れ方や感じ方は異なりますが、中には妊娠によるものではない場合もあります。 胸の痛みがみられる時に考えられる病気 胸の痛みがみられる場合には副乳や乳腺症、乳腺炎、乳房の腫瘍などの場合もあります。妊娠中でもこれらの症状や病気が認められる場合がありますので、胸の痛みで気になる場合にはかかりつけの産婦人科や乳腺外科を受診し、相談しましょう。 副乳 乳房以外のわきの下や乳房の下側などに乳腺組織が生まれつき存在していて、乳腺が腫れて痛む場合があります。私が出産で入院していたとき、同室だった方が妊娠すると副乳が腫れて痛いと言われており、本当に辛そうでした。妊娠して女性ホルモンの分泌が増加し、乳腺組織が発達すると副乳の乳腺組織も腫れて痛むことがあるようです。 腺症 女性ホルモンの影響、とくにエストロゲンの分泌が過剰になることで乳腺の変化がみられ、2)乳房の痛みやしこり、張りなどがみられる症状です。女性ホルモンの影響で身体が水分を蓄えやすい状態になると乳管に水が溜まり、乳腺嚢胞ができることもあります。乳腺嚢胞ができた場合には局所的な乳房の痛みが生じます。3) 乳腺炎 授乳中に起こることが多い乳腺炎ですが、妊娠期に乳管に母乳が溜まって炎症を起こり、乳腺炎になることもあります。細菌感染を起こして乳腺が炎症を起こす場合もあります。乳腺炎の場合は胸の痛みと腫れ、赤みや熱などの炎症症状がみられます。 乳房の腫瘍 乳房の腫瘍には線維腺腫、葉状腺腫、乳がんなどがあります。胸のしこりや痛み、乳頭から白色や赤色、黒っぽい色などの分泌物がみられる場合、乳頭や皮膚のひきつれやくぼみなどがみられる場合は医療機関を受診して必要な検査を受けましょう。 1)MSDマニュアル 家庭版 乳房の痛みLink 2)徳島県医師会 乳腺症Link 3)株式会社日立保険サービス 乳腺症Link

胸が張らないのに妊娠している可能性があるかを検証

生理前の時期にいつもはある胸の張りの症状がない場合や、なかなか生理が来ないけれども妊娠初期にみられるはずの胸の張りの症状がないという場合に、「胸が張らなくても妊娠している可能性はある?」と不安に思う人がいるようです。 たしかに、生理前の時期にいつもみられるはずの症状がなかったり、予定日を過ぎても生理がなかなか来なかったりすると気になりますよね。 今回は、妊娠初期にみられる症状と、生理前にみられる症状を調査した研究の結果をまじえながら、胸の張りと妊娠との関係について考えていきたいと思います。 妊娠中にみられるマイナートラブル 胸の張りは妊娠初期にみられる症状のひとつとしてよく知られていますが、どれくらいの割合でみられるのでしょうか。 妊婦のマイナートラブルについての調査研究 妊婦623人のマイナートラブルの発症率と発症頻度を調査した研究では、妊娠初期の妊婦56人中、44人の78.6%が胸の張りがあると回答しています。妊娠中期の妊婦201人中では140人で70.4%、妊娠後期の妊婦366人中では223人で61.4%の妊婦が胸の張りを感じているという結果で、胸の張りの症状は、妊娠初期に高い頻度でみられるという傾向が得られました。1) 妊娠初期にみられるマイナートラブルとして胸の張り以外に多かったのは、以下の症状です。 易疲労感・全身疲労感(92.9%) 強い眠気(91.1%) 腹部の締め付け感(91.1%) 皮膚の乾燥(89.1%) 口渇(87.5%) 肩こり(85.7%) 吐き気(83.9%) おりものの増加(83.9%) 排便困難感(82.1%) 腹部膨満感(80.4%) 性欲減退感(80.4%) イライラ感(78.6%) 臭いに過敏になる(76.8%) 1) 研究から読み取れること この調査からみると、妊娠初期の妊婦の約8割が胸の張りを感じており、妊娠初期に胸の張りがある人の方が胸の張りがない人に比べて多いということがわかります。しかし、反対に言えば、約2割の方は妊娠初期でも胸の張りの症状を感じないということになります。 生理前にみられるマイナートラブル 妊娠初期には多数の人が胸の張りの症状があることがわかりました。では、生理前ではどうなのでしょうか。どのくらいの割合で胸の張りの症状がみられるかを研究結果から確認してみましょう。 生理前にみられる症状を調査した研究、その1 女子大学生185名を対象に生理前の症状を調査した研究では、胸が張ると回答したのは全体の32.4%でした。そのうち、12.1%の人は毎月ではなく、2〜3か月ごとに胸が張ると答えています。 他にみられる生理前の症状としては、以下のものがあります。 イライラする(51.7%)…

妊娠すると胸の張りがあるけど痛くないってことはある?

妊娠すると胸が張る、胸が張って痛いという症状は一般的によく言われている情報です。胸の張りや胸の痛みで妊娠がわかったという人も少なくありません。 生理前に胸の張りや痛みを感じる人も多く、生理前の症状と比べて、妊娠しているかどうかの判断基準にする人もいるようです。生理前には胸が張って痛いのに、胸の張りがあるのに痛くないとなると、いつもと違う症状に不を感じてしまいますよね。 妊娠すると胸の張りがあるのに痛くないということはあるのでしょうか。 妊娠するとみられる胸の張りと痛み 妊娠すると胸の張りや胸の痛みがみられる人もいますが、具体的にはどのような症状がみられるのでしょうか。 胸の張りとは よく、胸の張りと表現されますが、具体的には、胸の硬さが増して全体的に張りつめている、胸の大きさが大きくなって皮膚がピンと張っている、何か胸がいつもと違う、違和感がある、脇の方がつっぱるなどの症状がみられます。私の場合は、何だか胸が気になり、押さえると痛い、脇がつっぱるという症状がありました。 胸の痛みとは 胸の痛みについては、胸が張りすぎて痛みを感じるという以外にも、胸の中がチクチクする、乳首が痛い、乳首がヒリヒリする、脇が痛い、歩いていて胸が揺れたり、うつ伏せになったりして胸が圧迫されると痛いというような症状がみられます。私の場合は、胸が圧迫されると痛い、乳首は痛いというよりかゆいという症状がみられました。 胸の張りや痛みの出方 胸の張り方や痛みは、左右の胸に両方出る人もいれば、片方だけにみられる人、胸の外側だけ、または内側だけにみられる人などさまざまです。私の場合は左右差があり、妊娠前には右の胸にとくに張りや痛みを感じていました。 生理前と妊娠した時の胸の張りや痛みの違い 生理前にも胸の張りや痛みの症状がみられる人もいます。胸の症状は、生理周期による女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が変動することで起こるとされています。 生理前の胸の張りと痛み 生理前の症状は、月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)とも呼ばれ、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が増加した後に急激に低下することで脳内ホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすこと、ストレス、環境などの影響を受けて起こる1)とされています。 生理前の症状は女性全員にあるわけではありません。胸の張りや痛み、お腹の張りや腰痛、頭痛、手足のむくみなどの身体的な症状と、落ち込み、イライラする、不安、混乱、引きこもり、怒りっぽいなどの精神的な症状のうち、何らかの症状がある人は月経のある女性の約70〜80%にみられるとされています。症状は生理前の3〜10日間続き、生理が始まると症状は軽減するかなくなります。2) 妊娠したときの胸の張りと痛み 妊娠した時も生理前と同じように女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が増加します。生理前では2つのホルモンの分泌が増加した後、急激に分泌量が低下しますが、妊娠した場合には2つのホルモンの分泌量は低下することなく増加し続けます。 出産に向けて女性ホルモンが増加し、乳腺、乳管などの乳房の組織が発達して乳房のサイズや重さが増大するのに伴い、胸の張りや痛みの症状がみられます。胸の張りは、ホルモンの分泌が増え始める妊娠が判断できる前の超妊娠初期や、乳房のサイズが著しく大きくなる12週前後、再び急激な乳房のサイズの増大がみられる妊娠後半の28〜32週頃3)にみられることが多くなります。 生理前と妊娠したときの胸の症状の差 生理前と妊娠したときの胸の張りや痛みの症状を比べても、生理前には胸が張って痛いのに妊娠したときには胸の張りがなかったという人もいれば、生理前は胸が張ることはないのに妊娠したときは胸が張った、妊娠したときの方が生理前よりも胸の張りも痛みも強かったなどさまざまで、人によって異なるもので胸の張りだけで妊娠を判断することは難しいです。私の場合は、生理前よりも妊娠がわかる前の方が胸の張り、痛みとも強かったです。 妊娠したときに胸の張りのみの症状の場合 胸の張りや痛みの症状は、生理前と妊娠時でも異なり、人によっても症状の出方は変わります。痛みはなくても胸の張りだけある人もいます。何もしていないときには痛くはないけれども、胸を押すと痛いという場合もあります。胸の張りと痛みはセットになってみられることもありますが、そうではない場合もあるのです。 胸の張りや突っ張りとともに、しこりがみられた場合には注意が必要です。妊娠中はとくに胸の張りの症状があるため、しこりがあったとしても気がつきにくい状態にあります。胸の張りの症状で気になることがあれば、産婦人科の主治医や乳腺外科で相談しましょう。 1)公益財団法人 日本産科婦人科学会 月経前症候群(premenstrual syndrome :…

生理前は胸が張るのに妊娠前には胸が張らないことってある?

胸が張るという症状は、生理前の症状としてよく聞かれる症状のうちのひとつです。そして、胸の張りの症状は妊娠初期の症状としてもみられることがあります。 妊娠初期の経験談として、「生理前の胸の張りよりも胸の張りが強いなと感じたら妊娠していた。」というパターンをよく見かけます。実は私もこのパターンでした。しかし、「生理前はいつも胸が張るのに、生理前なのに胸が張らないと思っていたら妊娠していた。」というパターンもあるようなのです。 生理前には胸が張るのに、妊娠前には胸が張らないということはあるのでしょうか?生理前と妊娠前の胸の張りの謎に迫ってみたいと思います。 生理前の胸の張り 生理前の胸の張りは、月経の前に精神的や身体的な不快・苦痛な症状がみられる月経前症候群(PMS)の症状のうちのひとつでもあります。 月経前症候群としての胸が張る症状 生活に支障きたすほどの月経前症候群の症状がみられる女性の割合は5.4%程度とされており、決して多くはありませんが、月経前に何らかの症状を抱えている人は日本の月経のある女性の70〜80%程度と言われています。1) 150種類以上もあるとされている月経前症候群の症状ですが、青年期女性の月経前症候群の実態を調査した論文では、月経前症候群の身体的症状として、「お腹が苦しい、不快感がある症状(81.6%)」の次に「胸が張る症状(64.8%)」の訴えが多かったという結果が得られています。月経前症候群でない人でも44.2%が「胸が張る」と答えており、2)多くの人が生理前の胸の張りを経験しているということになります。 私も生活に支障が出るとまではいきませんが、生理前に胸の張りの症状が出るうちの一人です。 生理前に胸が張る原因 生理前に胸の張りが起こる原因は諸説あり、はっきりとは解明されていませんが、月経前に症状が出て、月経が終わる頃には症状が和らぐため、女性の月経周期における女性ホルモンの分泌の変動が関係していると考えられています。 今までは、生理前に胸が張る原因として、排卵が起こってから月経までの黄体期にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の二つの女性ホルモンの分泌量が増えることや、月経前に身体に水分や塩分が蓄えられやすくなることが考えられていました。しかし、最近ではそれらの原因だけでは胸の張りを含め、生理前にみられる身体的な症状を説明することはできないという考えにシフトしてきています。3) 最近の考え方としては、黄体期の後半にエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が低下することが、脳内のホルモンや神経伝達物質のセロトニンなどの分泌や作用に影響し、月経前症候群が起こることが言われています。脳内のホルモンや神経伝達物質は環境やストレスの影響を受けやすいので、女性ホルモンの分泌量の低下だけが月経前症候群の原因とは言い切れず、さまざまな原因が複雑に作用しあって起こるとされています。1),3) 妊娠時の胸の張り 妊娠16週以降からは母乳がつくられるために乳腺が発達して胸が大きくなる時期です。4)この時期には女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの作用によって乳腺が発達して胸が張り、大きくなります。 では、妊娠初期はどうでしょうか。妊娠するとエストロゲンとプロゲステロンの二つの女性ホルモンの分泌量は増加します。胸が張る症状をはじめ、妊娠時にみられる様々な身体の変化は女性ホルモンの変動によって起こるとされています。 ただ、生理前に胸の張りを感じる人もいれば、胸の張りを感じない人もいるように、妊娠前の胸の張りの症状の出方にも個人差があります。そのため、全員が妊娠前の胸の張りを感じるわけではないようです。 生理前の胸の張りと妊娠時の胸の張り 生理前の胸の張りも妊娠時の胸の張りも、女性ホルモンの分泌の変動が関連しています。女性ホルモンの分泌量は人によっても差があり、エストロゲンとプロゲステロンの分泌の割合や変動の仕方も人によって幅があります。月によっても胸の張りが強く出る月やあまり胸が張らない月もあるでしょう。 私は妊娠している場合には、妊娠がわかる前の妊娠初期に胸が強く張るのですが、「もしかして妊娠?」と思うほどに胸が張ったときでも妊娠していなかったということもありました。胸の張りの症状も常に同じではなく、その時々によって差があるようです。 ですので、生理前に胸が張るから、妊娠前にも胸が張るとは必ずしも言えず、生理前に胸が張って、妊娠初期には胸が張らなかったというパターンもあり得そうですね。 生理前や妊娠初期に胸の張りが強く出る場合に考えられること 生理前や妊娠初期に胸の張りや痛み、しこりが触れるなどの症状が強くみられるときには、乳腺症や乳腺炎など、定期的な受診が必要である場合もあるので知っておきましょう。 乳腺症 生理前から月経にかけて胸の張りが強くなる、痛みがある、しこりが触れる、乳頭から分泌物が出るなどの症状がみられる乳腺症という症状があります。 乳腺症は女性ホルモンの変動によって起こる生理的な現象であり、乳腺症と診断されたからと言ってすぐに治療をしなければならないわけではありません。しかし、なかには乳がんのリスクが隠れていることもあるので、30歳以上の方や医師が必要と判断した場合には精密検査と定期的な受診で経過観察を行うことが必要です。 生理前の胸の張りが強く、気になるという場合は乳腺外科を受診しましょう。5) 乳腺炎 乳腺炎は授乳期の女性にみられる乳腺の炎症ですが、まれに、妊娠初期でも乳腺炎となる場合があるようです。胸の張り、痛み、熱感、赤み、発熱、腫れなどがみられたら、産婦人科や乳腺外科を受診しましょう。放っておくと悪化するので乳腺の炎症をおさえ、乳管の詰まりをとることが必要です。 生理前の胸の張りを和らげる方法…

妊娠中に片方だけ胸が張ることはある?

妊娠初期、妊娠後期には胸が張る症状がみられます。胸が張る症状は妊娠による女性ホルモンの変動によって起こり、母乳をつくる準備のために乳腺が発達することや、乳房への血液供給が多くなり、水分が蓄えられることで胸の張りが生じます。 妊娠中の胸の張りの症状が片方だけに限定してみられることはあるのでしょうか?左だけ、もしくは右だけ胸が張るという症状が起こったら、なぜ片方だけ?と不安にもなりますよね。今回は妊娠中に片方だけ胸が張ることはあるのか、不安になった時にどう対処すればよいのかについて確認していきたいと思います。 妊娠中に片方だけ胸が張ることはある 胸の張りには個人差があるため、妊娠中に片方だけ胸が張るということもあります。生理前に胸が張る時にも、片方だけ胸が張って痛むということもみられます。全員が両方の胸が張る、片方の胸が張るというように、症状が固定されているわけではなく、人によって両方の胸が張ったり、右が強く張ったり、左だけが張ったりします。 左右の胸の大きさに多少なりとも違いがあるように、人間の身体は左右差があるものです。乳腺の発達の仕方や乳腺の詰まりやすさなどにも左右差はあり、胸の張りの症状の出方が左右で異なることもあります。 胸が張る側と胸のサイズとの関係 私は普段、生理前には右の胸が張りやすいのですが、妊娠初期のまだ妊娠が判明していない時期に、普段より強い胸の張りを感じたのも右の胸でした。出産してからは三人の子どもの授乳中に乳腺炎に繰り返しかかったのですが、三回ともすべて乳腺炎になったのは右の胸でした。 実は左右の胸の大きさを比較すると、サイズが大きいのは左の胸なのです。胸が大きい方が乳腺もたくさん発達していそうですし、張ったり、詰まったりしそうなものですが、なぜか、張ったり、詰まったりとトラブルが多いのは小さい右の胸でした。 胸が大きいからといって胸が張りやすい、詰まりやすいということはないようです。胸のサイズとは関係なく、胸が張りやすい側があるようですね。 片方だけ胸が張って不安になったら 妊娠中にみられる胸の張りの症状として、胸が張って痛い、乳頭が痛い、乳房がズキズキ・チクチクする、脇が痛いなどの症状がありますが、片方だけにみられる場合もあります。 もし、片方だけ胸が張り、不安になったときには、妊娠の診断を受けた後であれば、かかりつけの産婦人科に受診、相談するとよいでしょう。不安なまま過ごしていてもストレスになりますので、かかりつけの産婦人科がある場合には電話でまず症状を相談してみるのもよいですね。 片側だけ胸が張る症状で考えられること 妊娠がまだわかっていない状態で、片方の胸だけ張って気になるという場合は、産婦人科や乳腺外科を受診し、相談するとよいでしょう。なかには、妊娠中に片側だけ胸が張って痛み、高熱が出るという症状で産婦人科を受診すると、乳腺炎だったという例もあるようです。珍しい例ですが、妊娠中でも母乳を出す準備が整っていれば乳腺炎になる可能性もあります。1) 他にも、妊娠中であっても乳腺症や乳腺線維腺腫、乳がんなどがみつかることもあります。妊娠中であっても、胎児を診るためにも使用されている超音波検査(乳腺エコー)や細胞診・針生検などは、放射線による被ばくの影響を受けずに検査することができます。マンモグラフィ検査は放射線を使用しますが、必要であれば、腹部を保護して受けることもできます。 妊娠中に片方の胸の張りとしこりなどの気になる症状を見つけたら、かかりつけの産婦人科、乳腺外科や乳腺外来を受診し、相談しましょう。2),3),4),5) 胸の張りをおさえる食事と生活 妊娠すると女性ホルモンの働きで乳腺が発達し、母乳をつくるための準備が整えられます。女性ホルモンの分泌のバランスが崩れることや、血流が滞ってむくみにつながると胸の張りが強くなることもあります。妊娠中でも乳腺炎になる例があるように、母乳の源となる血液がドロドロになると乳腺のトラブルにもなります。ホルモンバランスやむくみ、血液の状態を良くする食事と生活を心がけましょう。 胸の張りを抑える食事 肉・魚・卵・大豆などのたんぱく質で主菜を、ビタミンが豊富な野菜や果物、ミネラルや無機質、食物繊維が豊富な海藻やきのこを使って副菜を、乳製品からカルシウムをとり、米などの穀物を主食として栄養バランスの良い食事をとるように心がけましょう。脂質や甘いものは摂り過ぎると血液がドロドロになって乳腺が詰まり、胸が張りやすくなります。甘いお菓子も控えたいですね。 また、油をたくさん使う調理方法は避けて焼く、蒸す、煮るなどの工夫をするのもよいでしょう。塩辛いものは食べると身体のむくみを起こすので、塩分も控えましょう。6) 胸の張りを抑える生活 ストレスを抱えていたり、睡眠不足であったりするとホルモンバランスが崩れやすくなり、胸の張りが強くなることもあります。お気に入りのリラックス法や適度に身体を動かすことでストレスをうまく対処しましょう。 適度に動くことは血流を良くし、むくみの予防にもなります。妊娠中、状態によっては安静にした方がよい場合もあるので、運動を行う前には主治医に確認すると安心です。 1)ゼクシィBaby みんなの体験記 めったにない出産前の乳腺炎! Link 2)日本乳癌学会 患者さんのための乳がん診療ガイドライン Link 3)メディカルプラザweb 乳がんプラザ 妊娠6ヶ月…

妊娠中の胸の大きさってどのくらい変化するの?

妊娠中は胸の大きさが変化します。一般的には2カップサイズが大きくなると言われていますが、妊娠時期の胸の大きさの変化の仕方はトップ周囲よりもアンダー周囲が大きくなるという特徴があります。トップ周囲は妊娠経過による胸の乳腺の発達に関連して増大し、アンダー周囲は胎児の成長によって変わる子宮底の位置に関連して増大します。妊娠中の胸の大きさの変化についてみていきましょう。 妊娠中は2カップ胸が大きくなる 妊娠前から妊娠10カ月までの期間に、一般的には2カップ程度、胸が大きくなると言われています。一般的なバストトップとアンダーの差で2カップ大きくなるのではなく、胸の下部が横に広がる形で大きくなり、左右の乳頭の距離が広がります。 そのため、同じカップであっても、通常用のブラジャーとマタニティー用のブラジャーとでは形が異なります。妊娠期には妊娠期特有の胸の大きさの変化に合わせたマタニティー用のブラジャーがおすすめです。 妊娠経過と胸の大きさの変化 妊娠3カ月時には2/3カップ以上、妊娠5カ月時には1カップ以上、妊娠7カ月時には2カップ弱、妊娠10カ月時には2カップ程度大きくなるとされています。出産後は母乳が蓄えられるため、重さが重くなり、サイズは出産後1年程度かけて徐々に元のサイズへと戻っていきます。 トップよりもアンダーが大きくなる 妊婦の乳房の変化を調査した研究報告では、妊娠前から出産時期までにバストトップ周囲は平均6.5㎝増大し、アンダー周囲は妊娠前から妊娠36週頃までに平均10㎝増大し、出産直前に約2.5㎝減少する結果となっています。 バストトップ周囲は妊娠12週前後に急激に大きくなり、妊娠16週まで緩やかに増大したのち、妊娠24週まではあまり大きさは変わらず、妊娠28週と妊娠32週で急激に大きくなる変化がみられます。 アンダーはバストトップ周囲に比べて妊娠16週頃までは増大は少ないですが、妊娠24週と妊娠28週で急激に増大し、妊娠36週で最大値となり、その後出産直前までに減少します。 妊婦の乳房の変化を調査した別の研究報告でも、トップ周囲よりもアンダー周囲の方が妊娠前から妊娠10カ月の間での増大が大きく(トップ周囲は平均4.12㎝の増大、アンダー周囲は平均8.78㎝の増大)、胸囲としては平均8.58㎝の増大がみられます。 胸の大きさが変わると胸の形も変わる? 胸の形と妊娠中の胸の大きさの変化についての報告では、 下垂を伴わず、胸がやや大きくなった場合 下垂を伴わず、胸が大きくなる場合 やや下垂を伴い、胸も大きくなる場合 著しく下垂を伴い、胸も大きくなる場合の4パターンに胸の形を分けた場合 妊娠期を通して胸の形の変化はほとんどないとされています。 しかし、出産直後や経産婦では授乳期に母乳が蓄えられて胸が張り、授乳後は母乳が排出されるので、やや下垂した胸の形になると考えられています。妊娠前は下垂を伴わない胸の形の場合も、出産を経て胸の形は下垂するとされています。 胸の大きさが変化する理由とは 胸の大きさはトップ周囲とアンダー周囲で変化の仕方が異なります。それぞれ、どうして変化するのかその理由を見ていきましょう。 トップ周囲の大きさが変化する理由 トップ周囲が大きく増大する妊娠12週頃は女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの分泌が増え、乳腺が肥大・増殖し、脂肪組織が増える時期です。また、妊娠24週頃にもトップ周囲は大きく増大しており、この時期は授乳に向けて乳腺の発達がみられる時期です。トップ周囲の胸の大きさが変化するのは、乳腺の発達や脂肪組織の増加といった妊娠周期における乳房の組織の変化によって起こっています。 アンダー周囲の大きさが変化する理由 アンダー周囲の増大がみられる妊娠16週頃は胎盤が完成して胎児が発育する時期であり、子宮体が挙上して胃や横隔膜が上方に押されることが影響すると考えられています。また、妊娠40週頃になるとアンダー周囲の値が2.5㎝減少するのは、出産が近づいて胎児が下へ降りるのに伴って子宮底が下降することが影響すると考えられ、アンダー周囲の値の変化は乳腺の発達ではなく、妊娠経過によって胎児が大きくなるにつれて変化する子宮体の位置に関連すると捉えられています。 妊娠中の胸の大きさの変化は個人差がある 胸のトップ周囲の大きさの変化は乳腺の発達や増大が関係しています。超音波画像で妊婦の乳腺の発達を調査した結果では妊娠32週で乳腺が著しく発達している人もいれば、ある程度の発達がみられる人、妊娠36週になっても乳腺の発達が良くない人もいることが報告されています。乳腺の発達の程度は個人差があるので、乳腺の発達に関連して増大する胸のトップ周囲の大きさも、個人差があることが言えます。 1)ワコールマタニティ 身体の変化とマタニティインナー選び Link 2)堀井満恵ら 妊娠経過に伴う乳房の発育状況と泌乳との関係 富山医科薬科大学看護学会誌 第1号 1998 89-96 Link 3)山名信子ら 妊婦体型の妊娠経過に伴う変化 表2より一部抜粋 人間工学…

妊娠中にも見つかることのある胸の良性のしこりとは

妊娠中はしこりがあっても胸の張りや痛みでなかなか気づきにくい時期です。 胸の良性のしこりにはどのような種類があり、それぞれどのような治療を行うのでしょうか。しこりが見つかったら行う検査についてもみていきましょう。 今回は、妊娠中にも見られる胸の良性のしこりについて詳しく説明していきます。 良性のしこりとは 良性のしこりは、しこりができている部位に限局して大きくなることはありますが、周囲の血管やリンパ組織に拡がることはありません。一方、悪性のしこりは、がんに代表されます。しこりができている部位だけではなく、周囲の血管やリンパ組織に入り込んで、全身に無秩序に拡がって身体を蝕んでいきます。 胸の良性のしこりの種類 乳腺症 乳腺症は30〜40歳代に多くみられる1)乳腺の変化で、病気としては捉えられていません。 症状 胸のしこり、乳房の痛み、胸の張り、乳頭からの分泌物などがみられます。大半は良性ですが、なかには将来、がんになる可能性を秘めている場合もあり、精密検査が必要です。 原因 原因ははっきりとはわかっていませんが、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンのバランスの乱れから生じると考えられています。乳房の中の乳腺組織を構成している乳腺小葉や乳管の細胞の数が増えて、肥厚する、細胞の形が変わる、乳管の中に液体が溜まる、密度が増すなどの乳腺組織の変化が起こり、胸の症状として現れます。 治療・予防 乳腺の変化が強く出たものであり、病気としては捉えられないので、治療は基本的に行いません。痛みが強い場合にはエストロゲンをおさえる薬や漢方薬が処方されることもあります。脂肪分やカフェインの過剰摂取が痛みを増強させることも言われており、これらを控えることが予防になる2)と言われています。 乳腺線維腺腫 乳腺繊維腺腫は胸にできる良性のしこりで10〜40歳代に多くみられます。1) 症状 胸に触ると動くしこりができ、痛みはないことが多いとされています。しこりの大きくなるスピードは遅く、途中で成長が止まることもありますが、なかには急激に大きくなるものもあります。 治療 がん化することはなく、治療も必要ありません。急激に大きくなる場合は手術で取り除くこともあります。 葉状腫瘍 乳腺繊維腺腫よりも高齢の方で発症が見られ、良性、悪性、中間のものがあります。 症状 胸のしこりができ、急速に大きくなります。痛みは伴わないことがほとんどです。 治療 葉状腫瘍は急速に大きくなり、悪性のものあるので原則、切除手術を行います。再発しやすいため、しこりよりも大きい部位を切り取ります。切除後も再発や転移が起こらないか、経過観察の必要があります。 乳腺炎 乳腺炎は母乳が詰まることや、細菌感染することで乳房に炎症が起こった状態です。 症状 胸が赤く腫れる、熱を持つ、しこりが触れる、痛みがある、乳頭から膿が出るなどの症状が見られます。…

妊娠中に胸の大きさが変わらないと母乳が出にくい?

妊娠すると胸が大きくなると言われていますが、胸の大きさが変わらない人もいます。胸が大きくならないと出産後に母乳が出るかどうかを心配する人が多いようです。妊娠中の胸の大きさの変化と母乳の出の関係についてみていきましょう。 妊娠中には胸が大きくなる 一般的に、妊娠時には胸の大きさが1カップ、または2カップ大きくなることがみられます。とくに、初めての妊娠時は胸が大きくなりやすいと言われています。 女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが妊娠中に持続して分泌が増加することと、乳房の組織へ血流が増加するために胸の大きさの変化は起こります。妊娠初期から胸の変化は見られ、妊娠中、出産後の授乳期にも胸の大きさは大きくなることがあります。 妊婦の胸のトップ周囲値を妊娠初期から測定した研究報告では、妊娠初期から胸のトップ周囲値の増大が認められ、出産まで胸の大きさは継続して大きくなっています。 妊婦520名の身体計測(同一被験者の繰り返し測定あり)を行った研究結果では、妊娠2.3カ月から妊娠10カ月にかけて平均値で8.58㎝胸囲が大きくなっており、妊娠月数とともに胸囲も増大しています。 研究報告から、実際の妊婦さんの胸囲の計測の平均値をみると、妊娠によって胸が大きくなっていることがわかります。 妊娠中に胸が大きくならない人もいる インターネットに投稿されている妊婦さんによる口コミや質問では、「妊娠18週目に入っても胸が大きくならない」、「妊娠中は胸の大きさは変わらず、出産後に大きくなった」、「出産後、授乳期になっても胸が大きくならなかった」、「臨月に入って胸が急に大きくなってきた」という意見がみられました。 一般的には妊娠初期から胸が大きくなるとされていますが、妊娠初期からではなく、臨月に入ってからや、出産後に大きくなるという方もいるようです。また、妊娠中、出産後も胸の大きさが変わらないとういう人もいます。 「妊娠中に胸が大きくなったか」というアンケートの結果で、「いいえ」と答えた人が42.1%とみられたというアンケート結果もありました。このアンケート結果では、約4割の人は妊娠中に胸が大きくならなかったということになります。こうしてみると、妊娠中に胸が大きくならない人も少なくはないことがわかります。 一方、妊娠中に胸が大きくなった人は57.9%で、そのうち2カップアップしたと答えている人が半数近くを占めています。2カップアップの次に多かった答えは1カップアップで約4割を占めていました。残りの1割近くは3カップ以上アップと答えています。4)妊娠中に胸が大きくなる人の約9割は1~2カップ大きくなっていることになります。 胸が大きくなる程度と母乳の出は関係がない 胸の大きさが変わらないとなると心配になってくるのが授乳ですよね。妊娠中に乳腺が発達して胸が大きくなるはずが、胸の大きさが変わらないとなると、「母乳がつくられないのでは?」と思うこともあるでしょう。 胸の大きくなった程度と母乳の出の相関関係を調べた結果では、胸の大きくなる程度と母乳の出の間に有意な相関は認められなかったと報告されています。 実際の研究結果で、胸の大きさが4㎝増大した人で母乳の出が良い人もいれば、胸の大きさが7㎝増大していても母乳が全くでない人もいます。(表1参照)胸の形と母乳の出の相関関係もないとされています。 母乳の出は乳腺の発達との間に有意な相関関係があり、母乳の出が良い人は乳腺の発達が良いことが示されています。また、乳腺の発達の程度と胸の大きさの増大の程度との相関関係はなく、胸が大きくなったから乳腺がよく発達しているわけでは無いことが言えます。同様に、胸の大きさが変わらなくても乳腺が発達して母乳の出がよいこともあります。 胸の大きさの増大値 乳腺の発達の程度 体重の増加量 母乳の出 4.0㎝ 著しく良好 4.5㎏ 良好 6.0㎝ 良好 9.5㎏ やや良好 7.0㎝…